欧州CL通信BACK NUMBER
“野獣”に徹したチェルシーが先勝!
“美女”バルサを黙らせた気迫と運。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAP/AFLO
posted2012/04/19 12:00
3年前のCL準決勝で、フース・ヒディンク率いるチェルシーは、あと一歩のところまでバルセロナを追い詰めたが、アウェイゴールの差でバルセロナに敗れた。「私たちは3年前の試合から学んだのだと思う。あの頃よりチームは良くなっているからね」と試合後に語ったドログバ。
ドログバやランパードの献身的なプレーが光った。
ドログバの、敵の目には露骨な時間稼ぎと映る接触プレー後の大袈裟な演技も、自軍にとっては極めて効果的だ。自陣内では、後半ロスタイムまで敵のCKをヘディングでクリアし続けた。肝心のゴール前では、たった1度のチャンスを逃さず、利き足ではない左足で迷わずにダイレクトシュート。両膝でピッチ上をスライディングし、スタンドの大歓声に敬礼で応える姿は美しくさえもあった。
2列目でも、やはり連戦となったベテランのフランク・ランパードが光っていた。
1度目のパスカットは、キックオフから1分足らずの出来事。その後も、ジョン・オビ・ミケル、ラウル・メイレレスと共に、最終ラインの盾となり続けた。
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代償として、得意の前線への駆け上がりは封印せざるを得なかったが、値千金の1点は、ランパードが自陣内でリオネル・メッシからボールを奪い、左サイドを走るラミレスに送ったロングパスをきっかけに生まれたものだ。
「スタミナとパワーで我々を上回り、カウンターから得点を奪った」
4バックの出来は66分のリカバリーに代表される。
カウンターから、ミケルとメイレレスがメッシにドリブルで抜かれた場面。ペナルティエリア内に侵入した敵のエースには、すかさず、ジョン・テリーとギャリー・ケーヒルの両CBに加え、右SBのブラニスラフ・イバノビッチがプレッシャーをかけた。逆サイドのスペースはアシュリー・コールがカバーしていた。最終的には、テリーが冷静なシュートブロックで危機を回避している。
バルセロナのペップ・グアルディオラ監督も、「チェルシーを褒めたい。スタミナとパワーで我々を上回り、カウンターから得点を奪ったのだから」と勝者を讃えた。但し、続く「ボールをゴールに入れなければ試合には勝てない。来週の対戦ではチャンスにネットを揺らす方法を見つけるさ」というくだりは、第2レグでの得点と逆転勝利への自信を覗わせるものだった。