欧州CL通信BACK NUMBER
“野獣”に徹したチェルシーが先勝!
“美女”バルサを黙らせた気迫と運。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAP/AFLO
posted2012/04/19 12:00
3年前のCL準決勝で、フース・ヒディンク率いるチェルシーは、あと一歩のところまでバルセロナを追い詰めたが、アウェイゴールの差でバルセロナに敗れた。「私たちは3年前の試合から学んだのだと思う。あの頃よりチームは良くなっているからね」と試合後に語ったドログバ。
CLでのバルセロナとチェルシーの対決には、『美女と野獣』というタイトルが相応しい。スタンフォード・ブリッジを舞台に行われた、今季準決勝第1レグも例外ではなかった。
チームシートから想定されるシステムは共に4-3-3だが、事実上は2バックにも近い形でパスをつなぎながら攻めるバルセロナに対し、チェルシーは実質的に5名が横並びの中盤と4バックで守った。
ポゼッション率は72%対28%。
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シュートらしいシュートの本数は6対1。
正攻法で圧倒的に攻めた「美女」のバルセロナを前に、チェルシーのサッカーは、見た目に美しくはなく、数字の上でも分が悪かった。
しかしチェルシーは、胸を張って「野獣」役に徹した。
ホームでの90分間で守勢に回り、枠を捉えたシュートは1本のみ。ところが、前半ロスタイムにディディエ・ドログバが放ったその1本が、両軍を通じて唯一のゴールとなり、先勝を収めたのだ。
チェルシーはプレミアの中で最も「野獣」向きのチーム。
欧州サッカーの舞台において、近年とみにその守備力で隆盛を誇っていたプレミアリーグ勢。その中でも、チェルシーほど「野獣」向きのチームはない。
敢えてポゼッションを捨て、カウンターに勝機を見出す戦法は、疑問の残る主審の判定と土壇場のアウェイゴールに泣いた2009年の準決勝でも「美女」を窮地に追い込んだ。問題は、役者の加齢。前回対決から3年の月日が流れた今季も、30代の主力選手たちが、足を止めず、集中力を欠かさずに各自の役割を果たし切れるかどうかが疑問だった。
結果は、試合後のロベルト・ディマッテオ監督が、「ピッチ上で答えを出した」と誇らしげに語ったように、限界説を一蹴するチーム・パフォーマンスだった。
主役級の働きを見せたのは、1トップのドログバ。
3日前のFAカップ準決勝でも先発したCFは、フェルナンド・トーレスに出番を譲るかに思われたが、敢えて連戦を強いた指揮官の期待に見事に応えた。敵陣内ではロングボールに競り勝ち、巧みにファウルを誘ってはFKを得た。