欧州CL通信BACK NUMBER
“野獣”に徹したチェルシーが先勝!
“美女”バルサを黙らせた気迫と運。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAP/AFLO
posted2012/04/19 12:00
3年前のCL準決勝で、フース・ヒディンク率いるチェルシーは、あと一歩のところまでバルセロナを追い詰めたが、アウェイゴールの差でバルセロナに敗れた。「私たちは3年前の試合から学んだのだと思う。あの頃よりチームは良くなっているからね」と試合後に語ったドログバ。
バルセロナには何度も逆転のチャンスがあった。
実際、バルセロナには十分なチャンスがあった。
前半に手にした先制の絶好機は3度。早々の9分、アンドレス・イニエスタの浮き球に反応したアレクシス・サンチェスのロビングは、無常にもバーに当たって跳ね返った。17分には、ボックス内でセーブ後のこぼれ球を得たセスク・ファブレガスが、信じ難いミスキックで枠を外している。43分、メッシのスルーパスから、名誉挽回を狙ったセスクのチップキックは、コールのライン上クリアに阻まれた。
バルセロナが更に攻勢を強めた後半は、逆転さえ可能だった。
バルセロナのチャンスの数だけチェルシーの反省材料がある。
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57分、セスクがライン越しにふわりと浮かせたラストパスは、コールにプレッシャーをかけられたとはいえ、サンチェスがポストの内側に蹴り込んでいるべきだった。
87分には、FKからカルレス・プジョルのヘディングが、ペトル・チェフの横っ飛びセーブに遭った。
ロスタイム中にペドロ・ロドリゲスが放ったシュートは、チェフの手も、ライン上のコールの足も届かないコースに飛んだが、ポストに弾かれ、リバウンドを拾ったセルヒオ・ブスケッツのシュートは、ゴール裏のスタンドへと飛んでいった。
これらのチャンスは、同時に、戦前のプランを着実に実行したように思われるチェルシーにとっての反省材料でもある。圧倒的にボールを支配するバルセロナにチャンスを作らせないことなど不可能に近いのだから、自らチャンスを提供する事態は避けなければならない。
背後からサンチェスに抜かれたコールが、オフサイドをアピールするのではなく、追走してプレッシャーをかけていれば、バーを叩いた9分のシュートは未然に防げていたかもしれない。ミケルは、43分の危機を招いたように、メッシにフィジカルで競り負けることなどあってはならない。66分のメッシ独走は、雑なFKでボールを敵に譲り渡した結果だ。