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「歴史的采配ミスと言われたかも…」森保一監督が語る“なぜ望月ヘンリー海輝を起用したか”…ブラジル戦勝利の真相「コーチから“別の提案”もあった」
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木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAsami Enomoto
posted2025/12/30 11:12
NumberWebのインタビューに応じた森保一監督(57歳)
望月は最初のプレーでロドリゴに食いつきすぎ、完全に入れ替わられて危険なクロスをあげられてしまう。しかし、それ以降は粘り強いプレーを見せ、後半45分には長い足を生かしてクーニャからボールを奪って約30メートルドリブルで駆け上がった。後半49分にはロドリゴと1対1の場面で押し返した。
日本は後半48分に右シャドーの伊東が足を痛め、後半50分に右CBの渡辺剛が足をつり、2人がほとんど動けなくなってしまう。その危機的状況において、誰よりも幅広く動いたのが望月だった。決してパーフェクトな出来ではなかったが、逃げ切りに一定の貢献をしたことは間違いない。
森保は歴史的勝利が迫る中、選手のトライアルまでやっていたのである。恐るべき度胸だ。
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そんな大胆不敵な勝負師でも、自分の采配を試合後に思い出して苦笑いを浮かべることがあるという。
「ふとした瞬間にヘンリーが最初にきれいに背後を取られた場面を思い出し、あれで勝ちを逃していたら、歴史的采配ミスと言われたんだろうなと思いました。
采配を振り返って、自分の決断が合っていたのかなと考えることはよくありますよ。反省はいっぱいあります。
ただ、原理原則として、常に『日本代表の勝利』と『日本サッカーの発展』につながるかを考えている。選手交代もこの原理原則に立ち返って決めています。だからどの決断にも後悔はありません」
「中村敬斗のシャドー起用」も…
さらに選手トライアルと並行して、複数ポジション起用の準備も進められている。
11月のボリビア戦では、後半22分から中村敬斗を「3-4-2-1」の左シャドーの位置で起用した(中村、小川航基、町野修斗を同時投入)。これまで中村を左ウイングバックに置くことが多かったが、それとは異なるやり方である。じつは直前のガーナ戦でも、約7分間だけ中村を左シャドーの位置に置いた。
当然、この起用には狙いがある。
「いくつか意図があります。まず大きいのは、敬斗はウイングバックができますが、もう1つ前のゴールに近いポジションでも生きる選手かなと。ガーナ戦で少しやってもらいましたが短い時間だったので、ボリビア戦では左シャドーからスタートしてもらいました。
そのうえでウイングバックもシャドーもやるんだという認識を持ってもらうということです。
(左ウイングバックでプレーしていた前田)大然を1つ上げて、敬斗をウイングバックで使うことも考えましたけど、前線のトップとシャドーを3人セットで交代することで、圧力を高めたいと考えました。前へ出る勢い、活力がメッセージになるかなと」
複数のポジションでプレーできる選手が多ければ多いほど、W杯で勝ち上がったときに多様な戦術を採用できるうえ、ターンオーバーもやりやすくなる。
「W杯に向けて、種まきをずっとやっているんですよ」
2026年夏、アメリカ大陸で大きな実りを手にするだろう。


