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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「巨人はエドポロ・ケインを指名か」「高校生投手に8球団視察」…この報道って本当? スカウトが語る“ドラフト情報戦の真実”「視察は“消す”作業でもある」
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西尾典文Norifumi Nishio
photograph byPPAB-lab.
posted2025/10/17 17:00
強肩強打の外野手として高い身体能力が評価されるエドポロ・ケイン(大阪学院大)
「ドラフトが近くなると、スカウト会議や試合の現場にも取材に来られる記者の方が増えます。球団の方針にもよりますが、聞かれた質問にはある程度答えますが、そうなると具体的に名前が挙がるのは大半が他球団もマークしているような選手です。改めて記事にするほどでもないと思うのですが、(記者からすれば)そういうわけにもいかないのでしょう。『今年はこういう選手が評価が高いんだ』と知ってもらうためには、名前を出したほうがリアリティがあるのかもしれませんね。でも最近は、1位を決めるのは直前という球団も多いです」
この傾向は、情報が洩れるリスクを回避する狙いがある。情報が広がりやすい時代となり、どの球団も情報に対する危機管理の意識が強くなってきているといえそうだ。
いずれにしても、報道で挙がる名前はいずれも指名が有力視されている選手ばかり。また、この手の報道がよく出るのは阪神、巨人というスポーツ紙の担当記者が多い球団や、親会社が新聞社である中日が大半である。人気球団は試合がない日も紙面を飾る話題が求められることも多く、そういった報じる側の都合も往々にしてありそうだ。
視察はリストから「消す」ためでもある
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同じくこの時期に多いのが「視察情報」だ。ドラフト候補の選手が出場した試合を報じる記事には総じて『●●球団、●●人のスカウトが視察』と書かれ、視察したスカウトのコメントが紹介されることも少なくない。
ただ、これについても実情は異なる。選手を指名の対象として視察しているケースばかりではなく、“消す”作業も兼ねているからだ。
NPB球団では地区ごとに担当スカウトを配置している。それ以外にもスカウト部長など役職者や“クロスチェッカー”と呼ばれる担当地域を持たずに視察する担当を設ける球団もあるが、まず、選手をリストアップするかの判断を下すことが担当スカウトの仕事となる。
そんな彼らが最も恐れるのは他球団が指名した選手についてまったく把握していない、つまり「見ていない」ということだという。そのため、新聞や雑誌などの報道で有望選手として名前が挙がっている選手については、一度はチェックするのが通例となっている。その中から本当に指名の対象となるのは一握りであり、視察の大半はそういったリストから“消す”作業なのだという。


