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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「ちょっとダメかもしれない…」オリオールズ菅野智之が語る「野球人生で初めて絶望を感じた出来事」“日本で伝えられない”メジャー1年目奮闘の舞台裏
text by

山田結軌Yuki Yamada
photograph byGetty Images
posted2025/08/15 11:09
シーズン中も試行錯誤を重ねてさらに進化する
“遠慮を捨てた”菅野の進化
スライダーを生かす配球をする。持っている球種をまんべんなく駆使するコンビネーションで勝負する。それが菅野にとっての正解だった。
「僕のよさはやっぱりピッチミックスだと思ってる。いろんなボールをいろんなカウントでも投げられる」
6つの球種を偏りなく投げる。直球、ツーシーム、カーブ、スプリット、スイーパー(スライダー)、カットボール。全球種の質が高いことが菅野が日本球界で長くトップランナーだったゆえんだろう。だからこそ、遠慮を捨てて強く自己主張した。
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7月27日のロッキーズ戦前のバッテリーミーティングでのことだ。
「その時、初めてはっきり自分でピッチングコーチとキャッチャーに『(攻略方法を)こうしたいんだけど、どう?』とかじゃなくて『俺はもう今日こうするから』って。左バッターは2人しかいなかったんですけど、それはうまいこといきました」
研ぎ澄ました感覚か、データの“客観”か…
昨今、ハイテク機器の進化とともにデータ野球が隆盛している。もちろん、データを読み解き、自身のレベルアップに使う、試合での戦略に用いることは重要だ。一方でそれを盲信すると、落とし穴が待つ。
「データをすごく見せてくるんですよ。このバッターはここ打ってないよ。この球種を打ってないよ。自分が(配球プランなどを)こうするって決めていても、このデータを見せられるとそっか、じゃあそれでいいか、って思っちゃうんです」
感覚を優先すべきか、客観的なデータを優先すべきか。明確な答えはない。臨機応変にデータを活用し、フィールドでの直感、経験値に基づき、判断することもある。何が正しいか。正しい選択だったのかどうか。そのときどきの結果のみが教えてくれる。奇しくも菅野は、自身が打ち込まれた経験から己を信じる道を見出した。
復調への兆しをみせながら、7月末のトレード期限を過ぎ、菅野はオリオールズに残った。プレーオフ争いから、やや遠いチーム状況のオリオールズで投げ続けている。今、菅野は何を思いながら投げているのか。〈つづく〉


