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「ちょっとダメかもしれない…」オリオールズ菅野智之が語る「野球人生で初めて絶望を感じた出来事」“日本で伝えられない”メジャー1年目奮闘の舞台裏 

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山田結軌

山田結軌Yuki Yamada

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posted2025/08/15 11:09

「ちょっとダメかもしれない…」オリオールズ菅野智之が語る「野球人生で初めて絶望を感じた出来事」“日本で伝えられない”メジャー1年目奮闘の舞台裏<Number Web> photograph by Getty Images

シーズン中も試行錯誤を重ねてさらに進化する

 だが、絶望を感じたこの瞬間から、菅野は覚悟を決めた。自分の長所、得意なボールで勝負する。2イニング目には、安打、安打、四球で無死満塁。大ピンチの場面で菅野は、今までしてこなかった強い自己主張を見せた。

「ピッチングコーチがマウンドに来た時、『もう全球インコース、スライダーで行かせてくれ!』って言ったんです。それで抑えたんですよ」

 2番打者からセカンドフライ、サードファウルフライ、ピッチャーゴロ。軸になった球種は、スライダー、カットボール、スイーパー。左打者の内角、足元への曲がり球だった。

「僕ってやっぱり…」

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 なぜあの窮地で意を決して、「スライダーを投げたい」と訴えたのか。

「向こうも分析してきていただろうし“消しちゃっていた”ボールがすごく多くなっていた」

 菅野のいう「消すボール」とは。

「僕ってやっぱり、スライダーピッチャーなんですよね。自信があるんですよ。投げミスしないよ、っていう」

 メジャー移籍1年目。配球プランは捕手とチームの意見を尊重してきた。その結果、左打者に対して内角のスライダーが少なくなっていた。内角へ食い込むスライダーを意識させることができれば、外角を有効に使える。内外角へ配球の幅ができれば、狙い球を絞りにくくさせることができる。

導き出した不振脱出への答え

 だが、その「幅」を失っていた。左打者に投じた全球種、700球以上のうちスライダーはわずか5%ほど。その傾向が敵に把握されれば、狙い球を絞られやすくなる。つまり、相手が左打ちの場合、スライダーへの警戒を「消す」。それが、“炎上しない男”が炎上した原因だった。菅野の導き出した不振脱出への答えは「左打者の内角へスライダーをもっと投げないといけない」。その結果、2回は無死満塁から0点で切り抜けた。

「そこで自分の中で『やっぱそうだよな』って思った。本当に感情が上がったり下がったり、下がったり上がったり。ちょっとどういう状況だったかはっきり覚えてないくらい」

 絶望、のち希望。投手人生で初めて「ダメかもしれない」と思い、だからこそ自分の強みに立ち返った。

【次ページ】 “遠慮を捨てた”菅野の進化

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