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「オール徳島→部員7割が県外出身」甲子園3度優勝の名門公立校が激変、池田高は今…取材中に「それは、ないです」現監督がキッパリ否定した“ある質問” 

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田中仰

田中仰Aogu Tanaka

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posted2025/08/03 11:00

「オール徳島→部員7割が県外出身」甲子園3度優勝の名門公立校が激変、池田高は今…取材中に「それは、ないです」現監督がキッパリ否定した“ある質問”<Number Web> photograph by NumberWeb

池田高校(徳島)のグラウンドで練習する野球部員たち。今年7月に撮影

「監督である私の責任は免れないと思います。そこに言い訳するつもりはありません。指導も少しずつアップデートを重ねているつもりなんですけど、甲子園までの5つを勝ちきれない。僕らの時代には道があったんです。1、2年上には甲子園に行った先輩たちがいたし、“攻めダルマ”が監督でしたから。彼らが示す道をたどれば、なんとかなった。それが今は、道なき道を、迷いながら進んでいる状態です」

 徳島商、鳴門渦潮、鳴門。近年、徳島で安定した強さを見せる3校だ。甲子園で勝つのは難しくとも、徳島でならば。実際、そうした声は複数の関係者から聞いた。井上も幾度となく言われてきたであろう。徳島県代表が当たり前だった40年前。あれほど近かった甲子園は、いちど離れると、そこまでの道筋が見えなくなった。

「昔の池田はオール徳島でした。でも、甲子園から遠ざかると、有望な中学生から選ばれなくなる。それに(徳島)市内は街なので息抜きできる場所も多いけど、池田だと野球と勉強しかないですから」

公立校だが県外部員が7割…なぜ?

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 取材を打診する電話で、部員の多くが県外出身者であることは井上から聞いていた。すでに引退した3年生を含めて56人いる部員の約7割が近畿地方を中心とする県外出身だ。とはいえ、私立名門校のそれとは内情が大きく異なる。いまの池田は超高校級の選手から選ばれるチームではない。

「蔦さんは、県外の生徒が増えることを嫌がってたんですよね。こっちでは『おぼこい』って言うんですけど、あどけない徳島の子たちの中に、都会から来た子は溶け込めないって。でももう、時代が違うので。うちでやりたい、そう思って入ってくれるだけでありがたいですよ」

 徳島は少子化の進行が顕著だ。中学3年の生徒数は40年前から半減している。それを受けて徳島県教育委員会は、2016年度から親を伴わない県外生徒の転居を認めた。なにかと批判の声が上がっていた越境留学も、いまや地方公立校の野球部にとっての希望となっている。

 さらに池田は選手勧誘も行っていない。海にも本州にも開かれた四国東部の徳島市街地と違い、山間にある徳島最西端の高校。にもかかわらず県外から部員が集まる。そこに黄金時代の残照を見る。

 最も遠い神奈川から越境入学してきた佐藤丈太(2年生)は人懐っこい笑みを浮かべてこう話す。

「じいちゃんが隣町出身で、蔦先生の家を見に行ったというくらい池田の熱狂的なファンだったんです。それでおすすめされました。実際に練習を見学して、雰囲気がよかったのですぐに決めました」

 入寮当初を思い出しながらはにかむ。

【次ページ】 まるでホテル…寮に潜入

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