プロ野球PRESSBACK NUMBER
「大人って怖いなと(笑)」自由獲得枠で巨人入団の右腕も驚いた「右を見ても左を見ても大スター」清原、桑田…ジャイアンツ若手生活の“リアル”
text by

佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/01 11:02
完投勝利を挙げてヒーローインタビューで清原に祝福される巨人・木佐貫洋
寮に届いた郵便物を開けると…
もがいてもなかなか結果が出ないなか、巨人の看板の重さを感じることもあったという。
「当時は寮に住んでいましたが、郵便物がどんどん届くんですよ。誰からの手紙だろうと開けると“この間のピッチングは何だ!”みたいな内容もあって……。スマホがない時代でしたけど、今でいうSNSの誹謗中傷と同じような感じですかね。活躍した時はいいけれど、ダメな時は批判もくる。これがプロの世界だなあ、と痛感していました」
2007年は開幕から1年間先発ローテーションを守り、12勝を挙げ完全復活。再び明るい光の中を歩み出した木佐貫さんに翌2008年、“悪夢”が襲いかかった。
ADVERTISEMENT
「あの時の映像は、今でも見られないです。YouTubeに動画があるらしく知り合いからはよく『おまえ顔真っ青だぞ』って言われるんですけどね。でも思い出すとその時のことがフラッシュバックするというか……やっぱり見られないですね」
「忘れられない」スローモーションの衝撃場面
それは2008年5月7日の阪神戦。先発して迎えた3回、金本知憲に頭部死球を当てて危険球退場となった場面だ。当時金本は「世界記録」に向け連続試合フルイニング出場を継続中。さらに通算400本塁打も目前にしていた。
「あの打席は鮮明に覚えています。もともと金本さんにはプロ1年目から5割近く打たれていて苦手なバッターでした。キャッチャーの阿部さんがアウトハイに構えたので、高めは珍しいなと思っていた。
甘く入ればホームランになってしまう球。気をつけないと、と思いながら投球動作に入り、リリースの瞬間に手首がクルっと返った感覚がありました。“引っ掛け”でした。そこから先は今でも記憶はスローモーションなんです。『金本さん、何とか避けてください……』。自分が投げたボールがコマ送りのように見えた0コンマ数秒の間、祈るようにそう思っていたのを覚えています」
金本は避けきれず、ボールは後頭部を直撃。うつ伏せに倒れ込んだ「鉄人」の横で、ヘルメットは破損していた。東京ドームの観客は息をのみ、場内を支配した静寂がことの深刻さを物語っていた。〈つづく〉


