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「大人って怖いなと(笑)」自由獲得枠で巨人入団の右腕も驚いた「右を見ても左を見ても大スター」清原、桑田…ジャイアンツ若手生活の“リアル”
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/01 11:02
完投勝利を挙げてヒーローインタビューで清原に祝福される巨人・木佐貫洋
「それが巨人…」注目度に仰天
松井と言えば2月の宮崎キャンプではこんなこともあった。サンマリンスタジアムのスタンドを埋める大勢のファンに圧倒されていた新人の木佐貫さんは、近くにいた先輩選手の呟きを耳にして仰天した。
「お客さんの数が凄いなあと思って圧倒されていたら、先輩が『去年日本一になったけど、松井が抜けたからお客さんあんまり入ってないな』と口にしたんです。え、これでも“入っていない”のか、それが巨人なのか、とびっくりしたことが印象に残っています」
キャンプからアピールを続け、オープン戦は防御率0点台と快投した右腕は、開幕前のチームミーティングで原監督に直接、名前を呼ばれた。
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「木佐貫、お前さんオープン戦のMVPだ! 開幕3戦目、行ってこい!」
いきなり5失点KOに「大人って怖い」
開幕カード、中日戦での先発抜擢だった。ところが、勢い込んで上がったマウンドでは1回3分の1で5失点ノックアウト。まさにプロの洗礼だった。
「ベンチの中でぐわーってなっていましいた。その時、思ったことは、自分がキャンプからフルスロットルで投げていたのを、他球団のスコアラーやバッターはじーっと観察して『はいはい、木佐貫はこんな感じですか』と研究していたんだな、と。みんなオープン戦は手を抜いていたのか……大人って怖いなと思いました(笑)」
波乱の船出だったが「これでダメならもう二軍」と腹を括って挑んだ先発4戦目の横浜戦を7回3失点に抑えてプロ初勝利。そこから波に乗り、5月10日に初完投勝利を挙げるなど7月までに7勝を挙げた。結果的にシーズン10勝7敗と二桁勝利し、新人王を獲得した。
「ペース配分も分からず、がむしゃらに突っ走った1年でした。亜細亜大時代の猛練習の貯金があったから、なんとか持ったという感じでした」
「甘かった…」不調に陥った若手時代
巨人では上原以来の新人王となった右腕は一躍、脚光を浴びる。しかし、翌2004年は“2年目のジンクス”に陥り7勝8敗、一時リリーフに回った2005年は14試合の登板にとどまり、2006年も未勝利と悩ましい日々が続いた。
「怪我もありましたが、単純に不調です。私はその後の2球団でも必ず初年度はそこそこの成績を残すんですが2年目が良くない。気を抜くわけじゃないんですが、一息ついてしまうエアポケットのところで、対戦相手も研究してくるので成績が残せなくなる。
いいところに投げたはずのフォークボールに、相手のバットがピタッと止まったりして『何か癖がバレているのか』と疑心暗鬼になってザワザワしながら投げてしまったり……。今思えばそういう対策も含めて甘かったのだと思います」



