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元巨人・木佐貫洋のいま「路線図を眺める幸せ」野球界イチの“乗り鉄”右腕はスカウト転身「単線で視察に行ったことも」鉄道もフル活用して活躍中
posted2025/07/01 11:05

現在は巨人のスカウトとして活躍する木佐貫洋さん
text by

佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Yuki Suenaga
2003年に自由獲得枠で巨人に入団した木佐貫洋さんは、オリックス、日本ハムで活躍し、2015年シーズン限りで現役を引退した。現在はアマチュアスカウトとして未来の巨人戦士を発掘する木佐貫さんの今、そして球界きってのマニアとしても知られる「鉄道」についても聞いた。〈全4回の第4回/最初から読む〉
日本ハムにトレード移籍して3年目の2015年9月、木佐貫さんは戦力外通告を受けて引退を決断した。現役を続けるか少しだけ迷ったが、潔く心を決めた。
「心がバキッと折れた」引退を決めた出来事
「そもそも前年の2014年に一軍で5試合しか投げられなかったんです。これでダメなら辞めるという覚悟で2015年に臨んだのですが、二軍でもボコボコに打たれて防御率は6点台。高卒で入ってきた若いバッターに簡単に打たれて、なんだか『木佐貫さん、あなたもう無理ですよ』と言われているようで……心がバキッと折れたんです。これが潮時だな、と感じていました」
ラスト登板は9月30日、札幌ドーム(当時)でのロッテ戦。3年しか在籍しなかったが、球団が花道を用意してくれた。井口資仁らロッテの中軸打者を相手に、11球で三者凡退に抑え、13年間のプロ野球生活を締めくくった。
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「最後だからやるだけやろうと全力で投げました。めっちゃいいピッチングで、これを春先からやっておけよ、っていう(笑)。でも、生え抜きでもない選手にそういう場を用意してくれて、家族の前で投げられるというのは嬉しかったし、本当にありがたかったです」
手渡された「謎の電話番号」の相手は…
ユニフォームを脱いでからの第二の人生は、“余白”を挟まずに始まった。戦力外通告を受けた時のこと。「引退します。力になれなくてすみませんでした」と頭を下げた木佐貫さんに、当時の日本ハム・吉村浩GMが「お疲れ様でした」と言うなりすっとメモを差し出したのだ。そこには相手先の分からない、謎の電話番号が書かれていた。