最後の箱根は走れずとも…「大学は人生そのものについて学ぶ時間でした」元“高校歴代最速ランナー”石田洸介が振り返る「東洋大での波乱万丈」 

　大学卒業後は実業団のSUBARUに進む。オリンピック2大会連続入賞の三浦龍司も所属し、今年の元日に行われたニューイヤー駅伝では5位入賞を果たした強豪チームだ。高校時代を過ごした群馬県を、再び拠点とすることになる。

「苦しい時にもずっと見てくださったのがSUBARUでした。『たとえ大学で結果が残せなかったとしても、実業団のステージで復活できる』と言ってくださり、合宿に参加したこともありました。

　1回1回の練習で走れる距離が延びたり、スピードが上がったりすると、選手の皆さんがすごく褒めてくれたんです。一緒に走ってくれることもあり、陸上に対して違う視点からアドバイスをくださることもありました。そういう温かい環境が自分の支えになりました」

「悔いなく、自分の納得できる形で終われれば…」

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　苦しんでいた時期に手を差し伸べてくれた恩を返すために、石田はSUBARUへの進路を決めた。

「実業団は、自分の陸上人生の最後のステージになります。悔いなく、自分の納得できる形で終われれば、陸上競技が自分の中で大切なものになるんじゃないかな、といまは思っています」

　石田の陸上人生はもうしばらく続く。もちろん「世界を目指す」という夢を諦めたわけではない。まだ22歳だ。これから競技人生のハイライトを迎える可能性だって、十二分にある。

「陸上選手である以上は、競技で結果を残すことが最大の幸せ。1つ1つのレースで充実感を味わっていけるようにしていきたいです。例えば、日本選手権の舞台に立つことだけでも、いまの自分には大きな一歩になる。

　その結果によって自分の感じ方、向上心も変わってくる。まずはしばらく遠のいている日本トップクラスの舞台に立つことを目標にしたい。その先に世界という舞台を目指していきたいですね」

　現状を踏まえれば、今は大きなことは言えない。

　だが、それでも一歩一歩着実に歩を進めていくつもりだ。そして、自身が納得のいく競技生活を送れた時――「苦しんだ大学4年間は無駄ではなかった」と、再び胸を張って言い切ることができるのかもしれない。

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