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野球に未練は「ないですね」…大学ジャパン主将も経験“元・楽天ドラ4選手”がナゼ教育学の准教授に?「野球じゃなくても教えるのが好きなので」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by(L)NumberWeb、(R)JIJI PRESS
posted2024/12/24 11:04
楽天でのプロ野球選手時代と、立正大で准教授になった現在の西谷尚徳さん。両極端ともいえる2つの職業に通じるものは?
立正大の専任教師となってから、西谷は「文章」をテーマとした論文を定期的に発表している。そのことからも窺い知れるように、今や彼は完全なる教育者である。
高校時代から常に先を見据え、現実的な行動に移し、「プロ野球選手」と「教師」という大きな目標を達成した。そんな西谷だからこそ、「これから」が気になる。
「野球の現場はやらないんじゃないですかね」
今度は何を目指すのか?
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西谷が「う~ん」と、考えを巡らせるように首をひねり、口を開く。
「野球の現場はやらないんじゃないですかね。野球の指導には理論が必要で、その選手に適した練習法とかアドバイスができないと信頼関係は築けませんよね。それは、人間関係において全て同じだと思うんです。よく『人間力』という言葉が用いられますけど、私はそこに対して思想的にならないよう気を付けています。『楽しい現場、環境でないといけない』と思っていて、教育を謳う立場である以上は、そこを大事にして学生とコミュニケーションを取って、信頼関係を築いていきたいなと。今はそっちのほうが面白いので」
東京都品川区。
山手通りに面して林立するビル群の一角に瀟洒な立正大の校舎が立つ。幅の広い階段を上がり通路を抜けると中庭のあるキャンパスが広がり、学生たちで賑わっている。
そこが、西谷の今の居場所である。
数字などで実績が可視化されやすい野球と違い、教員はその時の取り組みが評価されるのは数年先であることも珍しくない。
立正大のキャンパスを臨みながら、西谷は自らのやりがいを見出すように言った。
「私なりに考えるのは他人の評価で。学生の親御さんが挨拶に来てくださっただけでも達成感があります。教育者にとって、目に見えるもの、見えないものも含め『何を評価として捉えるべきか?』と考えながら学生と向き合っていくことが、日々のモチベーションになるのかなと思っています」
いつだって現実から目を背けない、西谷らしい答えだった。