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「最後の整列に大谷翔平、山本由伸の姿はなかった」頭を下げた近藤健介…失意のWBC、現地記者が見た敗北の瞬間「申し訳ない気持ち」鈴木誠也の目は赤かった
posted2026/03/16 11:40
最後のバッターになった大谷翔平。フライを打ち上げた瞬間の表情
text by

佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Nanae Suzuki
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最後の打者になったのは大谷翔平だった。打ち上げた飛球がショートのグラブに収まると、歓喜に弾けるベネズエラ代表の輪の脇を淡々とすり抜け、一直線にダグアウトに戻っていった。
奇跡の物語を信じ続けていた選手たちは、その場から動けない。ラテンの熱狂が弾けるスタジアムの只中で、三塁側ベンチだけが静かだった。虚ろな表情のままただ一人、ベンチからグラウンドに戻ってきたのは近藤健介だった。今大会、1次ラウンドから不振にあえいできた天才打者だ。同じく呆然と立ち尽くすコーチ陣にひとこと二言確認し、促すような仕草を見せると、選手たちは次々とグラウンドに戻り、整列してスタンドのファンに頭を下げた。
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失意の侍たちの列に、大谷の姿はなかった。最後の打者として戻るやそのまま、ベンチの裏に姿を消していたのだ。その背中を追いかけたのは、先発投手の山本由伸だった。昨秋のワールドシリーズを制した二人は悔しさをただ胸の内に押し殺し、グラウンドを去った。
その後始まった最後のミーティング。井端弘和監督の挨拶が終わっても、選手たちはロッカールームを出ようとしなかった。宿舎に戻るバス乗り場へと続く取材のミックスゾーンに姿を現したのは、試合終了から1時間7分が経ったころ。先頭は、勝ち進めば準決勝で先発することが決まっていた菅野智之。次いで現れた吉田正尚は、テレビカメラの前に立ち止まった。
「取って取られての繰り返しで結果、最後負けてしまった。マイアミに来てからが勝負だと思っていましたけど、残念な結果、寂しい結果になってしまった」
全試合で四番打者を担い、東京ドームで行われた1次ラウンドでは、オーストラリア戦の逆転2ランなど2本塁打6打点と大爆発。マイアミに舞台を移して迎える初戦のこの日は、試合前の円陣で声出し役を務めてチームを鼓舞したが打撃は無安打に終わった。
「もっと長く最後までやれれば、と思っていました。勝負の世界ですから、こればかりは……。まだやるべきことは沢山ある」
静かにそう話し、すっと背筋を伸ばした。
大谷が繰り返した「みんな」
深夜1時半を過ぎた頃、大谷翔平もまたカメラの前でこの戦いを振り返っていた。



