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「もう、おまえしかいないから」“辞退者続出”井上尚弥とのスパーで呆然「爆弾のようなパンチ…ガードできない」柏崎刀翔が味わった“最大の衝撃”
text by
森合正範Masanori Moriai
photograph byJIJI PRESS
posted2024/10/11 11:44
2014年4月、井上尚弥はアドリアン・エルナンデスを破りWBC世界ライトフライ級王座を獲得。柏崎刀翔はスパーリングでその“異次元の成長”を体感していた
「全日本見たよ、今までお疲れさん。俺も心機一転、頑張るわ」
アルコール依存症の父からのLINEだった。これまでの労いと気持ちを新たに前へと進んでいくことが綴ってあった。血の繋がらない父。だけどボクシングへと導いてくれた父。酔っ払って無茶苦茶なアドバイスをしてきた父。おそらくYouTubeで中継された試合を見ていたのだろう。柏崎は、離ればなれになっても、応援してくれていることが嬉しかった。
父の急死「やりようがなかったのかな…」
それから1カ月後、柏崎は姪と映画館で『アナと雪の女王2』を見ていた。すると、家族から連絡が入っていた。
どうやら父が死んだらしい……。
数日前に病院に運ばれ、もう既に亡くなっていた。最期に会うことも叶わなかった。
「めっちゃ複雑な感情でしたね……。お酒を飲み過ぎておかしくなった状態で連絡が来るのがすごく嫌だった。それがもうなくなる安心感。それと僕自身、もっと父のところに顔を出したり、やりようがなかったのかな、と。言葉にしづらい、すごく複雑な気持ちでした」
1カ月前、「心機一転、頑張るわ」と言っていたのに……。父との思い出が頭の中を駆け巡った。
<続く>