“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「家にいたくない衝動で夜の街に…」伸び悩んだ天才パサーがお酒に逃げた理由を明かす…ガンバを背負うはずだった市丸瑞希の“心が折れた瞬間”
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2024/03/12 17:01
堂安律らと共にガンバ大阪の将来を背負う一人として期待されていた市丸瑞希(2016年)
完全に折れた心を奮起させることは不可能だった。どんな時も毎試合欠かさずに見ていた古巣ガンバ大阪の試合も、かつての仲間が出場している日本代表の試合も一切見なくなった。どんどんサッカーから離れていく自分がいた。
シーズン通して出場時間“60分”に終わった市丸には、当然、契約満了が伝えられた。トライアウトを受けたが、Jクラブからは一切声がかからなかった。
「ガンバで育ったことも、U-20W杯に出たことも、今思えばそれが変な自信につながってしまっていたのかなと思います。心の中で『俺はW杯を目指しているのに、こんなところでつまずいていられないんだよ』と思っていて、それが変なプライドになって自分の成長を阻害してしまっていました。本来なら全身全霊で這い上がるために努力をしないといけないにも関わらず、(J2を)こんなところと思っている時点で無理ですよね」
それでも、サッカーから離れられなかった
ただ、落ちるところまで落ちたことが、市丸の未来に光を差すきっかけを生んだ。
「選手として限界を感じたことで、セカンドキャリアとして考えていた指導者を本格的に目指そうと思えたんです。選手としてはどん底まで落ちたけど、サッカーをすることは大好きだったので、サッカーから離れることは考えられなかった」
どれだけカテゴリーを下げてもいい。もう1年現役としてプレーしながら、指導者の勉強をしたい。2022年を猶予期間として位置付けた市丸は、オファーと自身の思いが合致する関東1部リーグのVONDS市原と1年間契約を結んだ。
結果的に、この1年が市丸の今の人生につながっていく。
(#3へ続く)