“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「家にいたくない衝動で夜の街に…」伸び悩んだ天才パサーがお酒に逃げた理由を明かす…ガンバを背負うはずだった市丸瑞希の“心が折れた瞬間”
posted2024/03/12 17:01
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
J.LEAGUE
NumberWebで展開中の「消えた天才」特集。本稿では、将来を期待されながら25歳で引退した元U-20日本代表MF市丸瑞希の今に迫ります〈全3回の2回目〉
学校帰りの高校生でいっぱいのファストフード店。ざわざわとする店内とは対照的に26歳になった市丸瑞希の表情はこわばっていた。お酒に逃げてしまった当時の若い自分を振り返る。
「評価をされないのは自分のせいなのに、周りのせいにしてやけになっていました」
堂安律から「天才」と信頼され、周囲からも「遠藤保仁の後継者」と期待されていることはわかっていた。しかし、当時の市丸にとって、それは「直接、関わらない人たちの言葉」に過ぎなかった。
岐阜に移籍してからもお酒が増えた
ユース時代を過ごしたガンバ大阪の温情か、市丸は2019年5月にFC岐阜に育成型期限付き移籍のチャンスを得た。しかし、それでも負のスパイラルから逃れることはできなかった。むしろ、加速した。
加入後はスタメン出場を果たすも、移籍後2戦目の第15節町田ゼルビア戦では前半で途中交代。次節からベンチを外れた。
「カテゴリーを落として、当時J2で最下位だった岐阜に来た。正直(試合に)出られるやろって思っていたし、柿谷曜一朗さんのようにチームを浮上させて、J1に戻ろうと思っていたんです。でも、フタを開けてみたら……この時のショックと歯痒さはすさまじかった」
岐阜に来てからはお酒を呑む量もペースも上がった。ひどい時には練習の前日に深酒をしてしまうこともあった。
「練習後に家に帰りたくなかった。家にいるとイラつくし、悩むし、苦しくなってじっとしていられなかった。家に一人でいたくないという衝動だけで外出して、夜な夜な遊んでしまった」