より高いところを目指して研鑽を積んでいる鈴木にとっては、失点が学びにつながる。もちろん、公式戦では結果がすべてだが、反省からのフィードバックはつねに必要だ。

　決勝トーナメントのバーレーン戦の失点は2-0だった63分。相手の左コーナーキックに対してファーサイドからのヘディングシュートを一度は両手で上に弾いて防いだものの、ゴールライン近辺に落下してきたボールを鈴木がキャッチしかけた瞬間に、背後にいた上田綺世と接触してオウンゴールとなった。

　このシーンについて、鈴木は以下のように振り返る。

「シュートを弾く時に、確実にバーを越えてコーナーにする。そういう弾き方が必要でした。それができずにセカンドボールの対応にいこうと思ったんですが、僕も綺世選手が見えていなくてボールに反応した。キャッチした感覚はありましたが、その後に綺世選手とぶつかった。あそここそ（キャッチではなく）弾く判断が正解だったのかなと思います」

バーレーン戦の63分、上田綺世と交錯してオウンゴールとなった場面　©Kiichi Matsumoto

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　こうして迎えた準々決勝のイラン戦。50分に裏へ抜け出したサルダル・アズムンのシュートをセーブするなど、鈴木のパフォーマンスはそれまでの4試合と比べて最も安定していた。失点が続いて苦しい試合が続く中でも懸命にメンタルを整え、立て直していった成果が出たのだ。

　その背景には、チームメイトのサポートがあった。GK陣最年長の前川黛也はハーフタイムになると真っ先に鈴木のところへ駆け寄って声を掛けていた。さらにイラク戦後には失点に関する“度を越えた批判”が鈴木に集中していることについて、取材を通じて毅然とした態度で諫める発言をしていた。

「試合の前、前川選手はいつも『思い切ってやってこい』と言ってガッチリ握手を交わして背中を叩いてくれました。とにかく気持ちよくプレーできるように送り出してくれましたね。失点シーンについてはピッチ上で話し合うこともありましたし、常に素晴らしいサポートを受けて、自分としても思い切ってピッチに立てた。感謝が一番大きいです」

　野澤大志ブランドンは同い年であり、昨年9月にU-22日本代表として出場したバーレーンでのパリ五輪アジア1次予選でも共に戦った間柄だ。

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