「あの場面では、僕が出られたのではないかという意見もあると思います。自分としてはそこに至る前に、裏に抜けてきたボールに対して『キーパー！』と声を出して取りにいこうとしたシチュエーションが2、3回あったんですが、（味方に）聞こえていなかった。そういった中で迎えたシーンだったので、声が聞こえないリスクを考えてクリアを任せる方向に持っていって、その結果がPKになってしまった。やはりもっと自分からアクションを起こすべきなのかな、という反省があります」

イラン戦で声を出す鈴木彩艶。だが、大歓声もあって「味方に聞こえにくい状況」だったという　©Kiichi Matsumoto

　自分自身に厳しく、高いレベルを要求しているからこそ、鈴木は「もっとできたはず」と悔しさを率直に表現した。

「アジアカップではクロスに対して出られるシーンが何個もあったし、ルーズボールに対して自分が対応しなきゃいけないなというシーンもたくさんあった。今までやれていたのに、アジアカップで出せなかった。緊張感が高い中、そして代表というレベルの高いゲームの中で『当たり前のことを当たり前にやる』ということは、これからの課題になりました」

「代表に呼ばれ続けて、プレーし続けられるように」

　アジアカップを経験し、今後はどのような部分を磨いていこうとしているのだろうか。

「GKとしてはゴールを守るという前提が表現できていなかったので、まずは守備のところで重きを置いて、もっともっと追求していかなければいけない。攻撃についても、イラン戦の1失点目は自分のキックから始まっている（※相手に奪われてショートカウンターから失点）ので、精度を上げなきゃいけない。イラン戦のように相手のロングボールが多くなった時には、もう少し背後のケアをできるのではという思いもあります」

アジアカップでの苦い経験は鈴木彩艶に何を残したのか　©Kiichi Matsumoto

　どこまでも真正直に課題を列挙しながら、鈴木はしっかりと前を向いてこう続けた。

「これからいろいろな競争があると思います。自分をもっと奮い立たせないと、代表のピッチに戻るのは難しい。所属クラブで結果を求めなきゃいけないし、細かい質のところをもっと上げることも必要。同時に、自分の武器を磨くことも大切になってきます。代表に呼ばれ続けて、プレーし続けられるように、まずは自分自身に矢印を向けてやっていきたい」

　3月21日には、北朝鮮との北中米W杯アジア2次予選が国立競技場で、同26日には同じく北朝鮮との試合がアウェーで行われる。その時まで、そしてさらに先の最終予選やW杯本番まで、たゆまぬ研鑽の日々が続いていく。

＜前編から続く＞