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「佑二、お前が悪いわけじゃない」岡田武史がいま明かす13年前W杯“キャプテン交代”秘話「正直覚悟したよ。長谷部が無理って断ってきたら…」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJMPA
posted2024/02/27 17:00
2010年南アフリカW杯本大会直前、日本代表のキャプテンは中澤佑二から長谷部誠(左)に替わった。その真相を当時の監督・岡田武史が明かした
「佑二、お前が悪いわけじゃない。申し訳ないが、決めたこと。納得してほしい」
中澤にとって岡田は横浜F・マリノスでリーグ2連覇を遂げ、MVPに輝くことができた恩師でもある。分かりました、と短く言葉を返してきたという。岡田も敢えて理由を口にしなかった。理解してくれるはずだと信じた。
そして長谷部を呼び出したうえで「ゲームキャプテンをお前に任せたい」と要請した。目をしっかりと見て、言葉に力を入れて。長谷部が戸惑っているのは十分に見てとれた。沈黙の時間が続いた後、受諾の言葉を引き出した。岡田はホッと胸を撫で下ろした。
「正直、覚悟したよ」長谷部が断ってきたら…
だがスンナリと進んだわけではなかった。翌日の練習前、岡田がチームに伝えるとざわつき、全体練習後には田中マルクス闘莉王が「俺は認めない」と大声で叫んでいた。浦和レッズの元チームメイトとあって何でも言い合える関係だからこそのリアクションではあったものの、ワールドカップ目前での若いリーダーへの交代を歓迎する雰囲気とは言えなかった。
この日の夜になって長谷部は岡田の部屋を訪れたという。あまりに硬い表情だったことを指揮官は覚えている。
「闘莉王には俺も後で注意した。でもそういった反応が長谷部も気になったんじゃないかな。『予選を戦い抜いてきた佑二さんでやっぱりこのチームは行くべきじゃないですか』って言ってきたよ。それで俺はこう返した。『いや、お前にやってもらいたいんだ』とね。
正直、覚悟したよ。『やっぱり無理です』って断ってきたら、それはもう逆に任せきれない。違うヤツに頼まなきゃいけない。ドキドキしたよ、あのときは。そうしたらアイツ、できないとは言わなかったよ。俺のなかではそこで決着がついた」
「よし行くぞ!」中澤の姿勢に深く感謝した岡田
元々リーダータイプではない。だが新ゲームキャプテンに就任以降、ウォーミングアップでも先頭で走るようになった。そして長谷部を補佐すべく同じように前に立って走る前キャプテンがいた。岡田は心のなかで中澤に深く感謝していた。
「交代を発表したときからそうだよ。みんなが佑二に気を遣っている感じだったけど、アイツは『よし行くぞ!』って先頭で走ってくれてね。うれしかったし、やってくれたなって。頭が上がらないと思った」
岡田の決意は、長谷部にも中澤にもそしてチームにも真に伝わっていくことになる。
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