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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
“憎まれた名将”モウリーニョ60歳、ローマ電撃解任の背景…誹謗中傷ギリギリの毒舌と「若い頃は自分のことばかり考えていたが」別れ際の愛
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byEPA/JIJI PRESS
posted2024/01/23 17:00
電撃解任を告げられ、ローマのクラブハウスを後にするモウリーニョ
ミラン戦後、ローマに来訪したフリードキン会長から解任を告げられたモウリーニョは、パトロンと英語で激しい口論を交わしたとされる。哀しい結末だが、百戦錬磨の名将には因果がわかっていたはずだ。
彼が率いたローマには“スクデット獲得”、“CLベスト8定着を目指す”といった明白な近未来のビジョンが見えなかった。ファイナンシャル・フェアプレー制度による戦力補強の制約も現場のチーム作りの重い足枷となっていたことは否めない。
“スペシャル・ワン”はサッカー界屈指の敵役である
誤解を恐れずに書くと、“スペシャル・ワン”モウリーニョはサッカー界屈指の敵役だろう。個性の弱い敵役では舞台は盛り上がらない。
抜群の実績と名声、そしてニヒルなキャラクター性を兼ね備えた最強の敵役モウリーニョには、レフェリーへの抗議や悪態、それに伴う退場が付き物だった。ローマでの2年半の間に舌禍で積み重ねたレッドカードは7回にも及ぶ。「私のキャリアで最悪の審判だ」と言われたレフェリーは1人や2人ではきかない。
恐れる者なしの彼は、今季も敵味方問わず毒舌辛口、名言迷言を吐いた。
「私はベラルディを愛している。しかし、憎んでもいる」と、サッスオーロの主将FWをシミュレーションの達人として皮肉ったかと思えば、アウェーゲームで不甲斐なく敗れた自らの選手たちに対しては「おまえたちはそんなにぬくぬくした我が家が恋しいのか。マンマとパパ、おばあちゃんの手作りケーキがないと力が出せないのか!」と独特の言い回しで挑発し、奮起を促している。
サッリとの“ひと悶着”のち和解のハグ
昨秋のローマ・ダービー前には、これまた口の悪さで知られるラツィオ監督サッリとひと悶着を起こした。
先に仕掛けたのはサッリ親分だ。ダービーを直前に控えたCLの試合で会心の白星を挙げると、勝利の余韻そのままにさらりと嫌味を吐いた。
「うちはCLのハードな試合と同じ週に大事なダービーもやらねばならん。それに比べ、ローマはフレンドリーマッチか。楽な相手でいいのう」
翌々日にELの試合を控えていたローマが“レベルの低い大会でよろしいですなあ”と煽られた形だが、売られた喧嘩は必ず買うモウリーニョにすれば格好の獲物だ。これ以上は誹謗中傷になるという一線をギリギリ超えないところでやり合う知と毒の応酬こそ、むしろ彼の真骨頂。翌日の会見で早速やり返した。