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“憎まれた名将”モウリーニョ60歳、ローマ電撃解任の背景…誹謗中傷ギリギリの毒舌と「若い頃は自分のことばかり考えていたが」別れ際の愛 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byEPA/JIJI PRESS

posted2024/01/23 17:00

“憎まれた名将”モウリーニョ60歳、ローマ電撃解任の背景…誹謗中傷ギリギリの毒舌と「若い頃は自分のことばかり考えていたが」別れ際の愛<Number Web> photograph by EPA/JIJI PRESS

電撃解任を告げられ、ローマのクラブハウスを後にするモウリーニョ

「私にとってあらゆる試合が真剣勝負、フレンドリーマッチなどない。そもそも私はどんな対戦相手もリスペクトしてるからね。このメンタリティがあったからこそ私は26個ものタイトルを勝ち取ってきたのだが……お隣クラブの誰かさんはどれくらいタイトルを持っているのかな?」

 いざ迎えたダービー本番、顔を合わすなりサッリ親分は「おまえさん、本当にいけ好かない御仁だな」とぼやいた。すると、モウリーニョは「あんたもな」とニヤリ。

 曲者オヤジ2人は苦笑いとハグで和解し、試合もスコアレスドローの痛み分けに終わった。

ミラノやマドリー、ロンドンの頃のような“毒”はなかった

 名将がインテルで3冠を制してから、もうすぐ14年になる。熱狂の都ローマでのモウリーニョには、ミラノやマドリー、ロンドンで世界中を敵に回して戦った頃の毒はもうなかった。

 記しておきたいのは、イベリア半島の片隅セトゥバルから立身出世を極めた果てに辿り着いたローマで、モウリーニョ自身が認める心境の変化があったことだ。

 国民の9割以上がカトリック教徒であるポルトガル出身の彼にとって、ローマでの日々の暮らしは精神世界の都で自らの信仰と向き合うことも意味していた。もちろん齢を重ねたこともあるだろうが、彼は俗世での生業の合間をぬいながらキリスト教の名刹を訪ね歩く中で、人生観の変化を告白している。

「若い頃に考えていたのは自分のことばかりだった。しかし今、私は(ローマの)ファンを幸せにしたい、そうあってほしいと願っている」

世界的テノール歌手が送った「amoR」

 2度目のセリエAに挑んだモウリーニョは、心の底からサッカーを堪能していた。不甲斐ないチームや選手を詰っても、それがチーム愛ゆえの叱咤だと誰もがわかっていた。クラブのOBでもないのにここまでローマを愛し、ローマから愛された監督はいない。

 解任の日、トリゴリア練習場へかけつけた数百人のロマニスタたちを見た名将は感極まり「素晴らしい歳月だった」と涙にむせんだ。

【次ページ】 世界的テノール歌手が送った「amoR」

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