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中日“賛否両論”の指名なぜ?「“二遊間”問題は深刻です」谷繁元信(元中日監督)はどう見た? 全12球団ドラフト指名をガチ評価《セ・リーグ編》
text by
谷繁元信Motonobu Tanishige
photograph byJIJI PRESS
posted2023/11/03 11:04
外れ1位で草加勝(亜大)の交渉権を獲得した中日・立浪和義監督
【5】ヤクルト「意図が一番分かりやすい」
ヤクルトのドラフトは非常に意図が分かりやすかったですね。なによりもまず投手陣を強化したいと。そういったチーム事情もあって、1位の西舘昴汰投手(専修大)、2位の松本健吾投手(トヨタ自動車)、3位の石原勇輝投手(明治大)と即戦力になり得る大学・社会人のピッチャーを3人指名しました。
もちろん、どのチームもいいピッチャーはいくらでもほしい。しかし特にヤクルトの場合は、投手陣に明確な課題を抱えているという現状(2023年のチーム防御率3.66は12球団中12位)がある。それがよく表れた指名と捉えていいでしょう。
要するに上位指名の3選手には「来年そのまま一軍の投手陣に入ってほしい」ということです。実際にそうなればヤクルトとしては万々歳だし、ある意味で選手たちにとってもチャンスがありますよね。12球団のなかでも、際立って「来シーズンから使います」というメッセージが込められた上位指名だったと思います。
【6】中日「物議を醸した指名」
度会選手を外してしまった中日ですが、ロッテとの抽選で草加勝投手(亜細亜大)を確保できたのはよかったですね。体力もかなりあるみたいですし、「先発陣に入ってきてくれるだろう」という期待感はあります。先発投手の候補は何人いてもいいわけですから。
一方で、ショートの津田啓史選手(三菱重工East)と辻本倫太郎選手(仙台大)を2位と3位で指名したことが物議を醸していると聞きました。おそらく「去年も内野手を獲っていたのに」ということだと思いますが、現状、かつてのアライバ(荒木雅博・井端弘和)のような選手がいるわけじゃない。中日の二遊間問題は深刻で、今年なんて最後はカリステがショートをやっていましたし、セカンドも日替わりでした。
今回指名された2人を、去年指名した村松開人や田中幹也、さらに龍空ら既存の戦力と競わせていくイメージでしょう。現状レギュラーがいないので、シンプルに「しっかりとした二遊間を作らないといけない」ということだと思います。
批判もあるみたいですが、現時点で「この指名は違う」と言っても、正直わからないじゃないですか。まだプロでプレーもしていないわけですから。最終的に「この年のドラフトはよかったね」という話ができるのは、3~5年後のこと。たとえば、ここ2年で内野手をこれだけ獲って、5年後に1人もいなかったら失敗だと思います。でも、結果的に誰か2人が二遊間で活躍していたら、「あの指名はよかったね」ってみんな言うんですよ(笑)。逆に2018年のドラフトで根尾昂を獲得したとき、多くの人が「いいドラフトだった」「よしよし、これでショートはしばらく安泰だ」と思ったはずです。でも、結局いま根尾はピッチャーをやっている。そういった意味で、ドラフトの時点であまり一喜一憂する必要はない、というのが僕の考えです。
二遊間の選手として重要なことは、まずは守れるかどうか。二遊間をしっかり守れる選手がいないと、チームとして成り立たない。「来年、誰が中日の二遊間を守っているのか」は、今回の指名で個人的にも非常に気になるポイントになりました。
(構成:NumberWeb編集部)
<「パ・リーグ編」に続く>