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山本由伸はなぜドラフト4位まで残っていた? 元18番の担当スカウトが明かす“期限ギリギリの志望届”「宮崎にすっ飛んで行きました」
posted2022/03/27 17:05
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
KYODO
絶対的エースが、また一つオリックスを呪縛から解き放った。
山本由伸は昨年、15連勝を含む18勝5敗の活躍で、12球団一長く優勝から遠ざかっていたオリックスを、25年ぶりのリーグ優勝に導いた。
そして今年、3月25日の開幕戦で、これまで開幕戦10連敗中だったオリックスに、2010年以来12年ぶり(2011年は引き分け)の開幕戦白星をもたらした。
終始150キロ台のストレートが走り、要所で落差の大きいカーブを抜群のコントロールで操って西武打線を翻弄した。福田周平、宗佑磨、そして山本自身も気迫のダイビングキャッチで自らピンチの芽を摘むなど、守備にも好プレーが相次ぎ6-0の勝利。山本は8回被安打3、9奪三振。三塁を踏ませない圧倒的な投球で勝利投手となった。
昨年、山本がやり残したことは、開幕戦勝利と日本一だけだった。その一つをやり遂げ、試合後のヒーローインタビューでこう宣言した。
「去年最後、日本シリーズでとても悔しい思いをしたので、今年もまた日本シリーズに行ってリベンジできるように、リーグ優勝目指してしっかり投げていきます」
担当スカウトが明かす不思議な縁
「オリックスには由伸がいる」
今やチームメイトやファンに、そんな安心感と勇気を与える存在である。
だが、ほんの少しでも運命の歯車がずれていたら、山本はオリックス・バファローズのユニフォームを着ていなかったかもしれない。
「由伸とは、不思議な縁があるんですよ」
山本の担当スカウトだった山口和男アマチュアスカウトグループ長は、7年前の山本との出会いを懐かしそうに振り返る。山本が宮崎県の都城高校2年だった、2015年2月のことだ。
オリックスはその前年まで宮古島市で春季キャンプを行っていたが、15年に宮崎市に移転した。山口はチームのキャンプを視察したその足で、都城高を訪れた。
初めて出会った日、ブルペンで投球に没頭する山本の姿が、山口に強烈なインパクトを残した。