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鎌田大地「“他の選手と比べて”わかってなかった」激変した27歳“日本代表観”のホンネ「律がそう。建英、薫とかも…もちろん自分もです」
posted2023/09/08 17:03
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Shigeki Yamamoto
鎌田大地は、たぶん、誤解されていた。
カタールW杯前までは、サッカー選手として当然のことを口にして、批判を招いたこともある。W杯にいたるまでの間には――童話「北風と太陽」に出てくる北風のように――記者が模範解答を求めることがしばしばあった。
「日本代表のために全力を尽くしたいです」というような答えを、だ。
そんな質問に対して、鎌田はこんな風に答えることが多かった。
「代表も大事ですけど、給料を支払ってくれているのはクラブなので、まずはクラブで全力を尽くしたいです」
記者が想定した答えを口にしなかったがゆえに、淡々とプレーするスタイルとも相まって「代表への想いのない、戦えない選手」だと受け止められることもあった。
“他の選手と比べて”自分はわかっていなかった
しかし今年3月、代表合宿中に代表への決意を書くように求められた鎌田はこのように記した。
「チームの為に戦う」
自分のことばかり、クラブのことばかり考えていると以前までは受け止められることの多かった鎌田が、そんな目標を書くほどに“変わった”のは何故なのだろうか。
「あれは食事が終わったタイミングで書くように求められて、そこまで深く考えたわけではないんですよ。
でも、カタールW杯が終わってからですかね。『日本代表とはどういうところなのか』とか『国のために戦うというのはどういうことか』について、”他の選手と比べて“自分はわかっていなかったなと気づいたんです。今は『チームのために、何かできたらいいな』と思うようになりましたから」
“他の選手と比べて”というのが、キーワードだ。
鎌田はサッカー選手として自身のキャリアを、光と影でいうところの「影」を歩んで作られてきたものだと自覚している。そこで育まれた「雑草魂」は自らのパワーになる一方で、あるものが欠落していたという実感がある。
「リオ五輪の時もそうだったし、その前のアンダーの代表でもそうでしたけど、これまでは大事な大会で代表に呼んでもらえなかったりして……自分は代表との縁がなかったんですよ。だから、そういう気持ちの部分で、代表に対して強く思えていませんでした」
一部記者が求めてきたような模範解答を口にしたり、安易に話を合わせることをしなかったのは、鎌田が正直だからだった。
感銘を受けた“永嗣さん、佑都くんの涙”
では、カタールW杯を境に、代表で戦う意義を自覚していったのは何故なのか。その理由ならば、今の鎌田は明確に答えられる。