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「メンタルが複雑骨折」鎌田大地27歳ラツィオ移籍までの苦悩を激白…幻の背番号14、“グチ聞き役”の長谷部誠から「“ラツィオいいじゃん”と」
posted2023/08/20 11:09
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Shigeki Yamamoto
「それはキツかったですよ。メンタルが複雑骨折しているくらい、イカれてました」
鎌田大地が回想するのは、フランクフルトを一度離れてから、また舞い戻ってきた時期のことだ。
……と、ここだけ読んでも、どれほどの状況だったかはわからないはずだから、まずは6月後半に時計の針を巻き戻してみよう。
7月2週目には“新天地”に移籍するはずだった
6月の代表戦のあとに日本でオフをとっていた鎌田は、7月の2週目には“新天地”に移籍するはずだった。背番号もお気に入りの14番をもらえる約束を取り付けていたし、新しく暮らす街の空気も食事も楽しめそうな気がしていた。
そこに至る前までには移籍が破談になりそうだという報道も出ていたが、「心配ない」と言われていたため、その移籍が「実現しない」と代理人から知らされたときにはさすがに、嫌な予感はした。
ただ、頭が真っ白になったわけではない。他にも“カード”があったからだ。
そもそも2023年に入り、鎌田は契約満了まで半年を切ったため、当時所属していたフランクフルトに断りを入れることなく自由に交渉できるようになった。それからは、数多の問い合わせやオファーが届いた。そして今年2月の時点で、そのうちの4つを精査した上で2つに絞って、交渉を進めることにした。
「移籍市場はサインをするまで、何が起こるかはわからない」
相手の気が変わったり、人事部門の責任者などが突如クビになるようなこともある世界。だからこそ、候補を1つだけに絞らず、丁寧な交渉をお願いしていた。実際、鎌田と話がしたいと言ってきたクラブの大半とはコンタクトを取っていた。代理人に任せてそれほど入念に交渉を進めた自信があった。
だから、残念ではあったが、同時に「こういうケースのために備えていた」という自負もあった。
「獲得することができなくなった。やはり…」
ただ、もう1つのクラブのオファーには、ある条件がついていたことだけが気になっていた。
「ファイナンシャルフェアプレー制度に抵触する恐れがあるから、君を獲得するにあたってはまず、人員を整理する必要がある」
移籍が決まったクラブとともに練習しながら、人員整理(既存の選手を売却したり、残留する選手の給料を下げたりすること)をしながら選手登録ができる状況になるのを待つケースもある。
そこまで深く気には留めずに、鎌田は一度、フランクフルトへ飛ぶことになった。ヨーロッパの重要なハブ空港であり、勝手知ったる街にあるフランクフルト国際空港からは、ヨーロッパの主要都市のほとんどへ直行便が出ているからだ。日本からのロングフライトを終えてフランクフルトで1泊し、翌日に目的地へ飛ぶことになっていた。
しかし――。
フランクフルトに着くと、嫌な予感が増大するような連絡があった。