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なぜ鎌田大地は1年前「ベンフィカ行き飛行機チケット」が手元にあったのに残留した?“結婚の過程”もCLも…本音で語るライフプラン
posted2023/08/20 11:08
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Hideki Sugiyama
熱い思いを告げられて、鎌田大地の心は震えていた。
およそ1年前。手元には〈リスボン行きの飛行機のチケット〉まで届けられていた。昨年夏に多くのメディアに報じられたとおり、ポルトガルの雄ベンフィカ・リスボンが自身の獲得のために、もっとも情熱を注いだクラブの一つだった。それは鎌田も認めることだ。
ただ、ベンフィカへと引き寄せられそうになっていた心は、当時のフランクフルト監督、オリバー・グラスナーからの呼びかけで変わることになる。
フランクフルトに残留すれば、干されてしまうのでは
グラスナー監督と話す前に、鎌田の心がベンフィカに傾きかけていた理由は大きく分けて3つあった。
1つ目は何度も何度も誘ってくれた情熱。2つ目は選手を育てていくスタイルのチームでありながらホームスタジアムで複数回チャンピオンズリーグ決勝が開催されるほどのポルトガルの名門であるという事実。
そして、もっとも大きかったのが3つ目の理由だ。
「契約が残り1年となった時点でフランクフルトに残留すれば、干されてしまうのではないか」
そんな不安を鎌田は覚えていた。
クラブの中心選手は、契約期間が残り1年になるタイミングで、契約延長に応じるか、応じないかの選択を迫られるのが普通だ。その過程では、あえて試合に使わないことで契約延長をするよう圧力を受けるケースもある。
忘れないでほしい。ダイチは私にとって特別な選手だ
ただ、グラスナー監督は違った。
「二人で話をしよう」
監督に呼び出された鎌田は、思いがけず、温かい言葉を贈られた。
「私にとっては契約の残り期間が1年だろうが、5年だろうが関係はない。私の基準はシンプルで、パフォーマンスの良い選手を起用するだけだ。
忘れないでほしい。ダイチは私にとって特別な選手だ。だから、契約のことは関係なく、今シーズンもうちに残って一緒に戦ってくれ」
温かくもあり、熱くもあるメッセージに鎌田はこう答えた。