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「高校サッカーの指導者にプロは無理でしょ」批判も…J2首位独走、“青森山田高の名将”黒田剛監督は昨季15位の町田をどう変えた? 本人に聞く
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/09/08 11:10
今季から町田で指揮を執る黒田剛監督(53歳)。昨季15位だったチームをどうやって変えたのか?
「日々の練習で相当厳しく追及していますが、プロだからこそ基本の徹底が疎かになることもあると感じています。極論をいえば、高校生と比較しても、プロ選手には『オレはプロだし、言われなくてもわかっている』という根拠のないプライドが芽生えてしまっている場合があるというか。
本当に強いチームというのは簡単には芯がブレないものです。しかし、途中で息切れするというのは、基本が真のスタンダードになっていないということです。そうしたマインドを変えることは簡単ではありません。残りのシーズンに向けてもう一度、第1タームのような“悲劇感”を持って練習から実践していこうと選手たちに伝えているところです」
「目の敵にされているのは感じます」
元々、黒田監督は高校サッカーの指導者として30年間近く、充実した日々を送っていたため、プロの指導者への興味があったわけではない。それでも21年度に松木玖生(FC東京)や宇野禅斗(町田ゼルビア)らを擁し、インターハイ、高円宮杯U-18プレミアリーグ(EAST)、高校選手権と3冠を達成。全てのタイトルを奪った後のモチベーション維持が難しくなり、そんなタイミングでの町田からのオファーにプロ転向を決めたと振り返る。
これまでJリーグの監督は元プロ選手が務めるという流れが一般的だっただけに、就任時にはやっかみめいた声が少なくなかったのも事実である。
「いくら高校サッカーで結果を出したからといって『プロでは無理でしょ』と思っている方がいるのは理解しています。プロで長く監督をやられてきた方にしたらプライドもあるでしょうし、(プロ指導者)1年目の私に負けられないという思いもあるでしょう。ただ、町田も様々な批判があるなかで覚悟を持ってオファーをしてくれたわけで、私も逆風のなか請われて就任した以上、やるからには絶対的な爪痕を残したい。
高校サッカー界にも将来プロの指導者を目指している人がいるなか、私が成功例となることで後輩への道を作ることができるかもしれません。町田がJ2の首位に立っているいま、就任時以上に周囲から目の敵にされているのは感じますが、それでリーグが盛り上がるならいいじゃないですか」
パワーポイントで資料を自ら作る
異色なキャリアゆえに、メディアに取り上げられる機会も多い。勝ち点や失点数(年間30以下)の数値目標を明確にし、短期、中期、長期とターゲットをはっきりと提示する――チームを率いる様はビジネスマンのようだ。だが、そのスタイルは誰かの模倣ではなく、教員として青森山田を長年率いてきたなかで徐々にでき上がってきた。
そして、黒田流マネジメントの1つの特徴はミーティングにある。