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「高校サッカーの指導者にプロは無理でしょ」批判も…J2首位独走、“青森山田高の名将”黒田剛監督は昨季15位の町田をどう変えた? 本人に聞く
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/09/08 11:10
今季から町田で指揮を執る黒田剛監督(53歳)。昨季15位だったチームをどうやって変えたのか?
「ミーティングで何かを言ったところで、トレーニングで即実践されなければ全く意味はありません。なので、どんなタイミングで、どんな言葉をかければ、選手に一番響くかは意識しています。私自身、それが指導者やリーダーにとって最も大事なスキルだと考えていますので」
たとえば週1度の試合が日曜開催の場合、翌月曜日が軽めのダウンで、火曜日がオフ。水曜日が次の試合に向けてのスタートとなる。その練習前、朝9時から黒田監督が20分程度話すことが恒例となっている。
黒田監督は担当スタッフ2人とともにほぼ休日返上でミーティングで見せる“反省ビデオ”の作成に携わる。さらに試合前の資料も自らパワーポイントで用意しているという。
「週最初のミーティングでは前の試合の映像を見ながら、反省をとことんやります。ダウンと休みの1.5日分を使って、試合で反省すべき7、8シーンをピックアップしたビデオを作り、それを見せてレクチャーします。
言うべきことは事前に箇条書きにしてまとめています。パワーポイントの資料を作るため、自宅のテーブルの上にはいつもパソコンが置きっ放し。ただ、パソコンと向き合ったからといって言葉は突然出てくるわけでもないですし、何かのタイミングで閃けばその都度メモしています。電車に乗れば常にチラシや広告に目をやりますし、どこかに人に響く言葉やキャッチフレーズがないかを探すのはもはや習慣として染みついていますね」
負けず嫌いの性格が強いせいか、思ったことを言わないと気が済まず、ミーティングの時間がやや長くなることもある。ただ、そんな熱のこもったミーティングが、選手の戦う気持ちを引き出しているのだ。
「選手のストレスに多少なってしまっても言わなければいけないことは我慢せずに言わせてもらっています。言い忘れや言い損ねで、後悔するのだけは嫌ですから。そこに対しては、まったく遠慮や妥協はありません」
当初、黒田監督自身、高校サッカーで培ってきたものがプロでどれだけ通用するかは不安もあったという。だが、ここまでの結果でそれを覆し、黒田監督の言葉も説得力を増している。
<「禁断の移籍、ロングスロー、時間稼ぎ……」“賛否の声”を黒田監督はどう感じているのか? 続きで聞いていく>
《続く》