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「高校サッカーの指導者にプロは無理でしょ」批判も…J2首位独走、“青森山田高の名将”黒田剛監督は昨季15位の町田をどう変えた? 本人に聞く
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/09/08 11:10
今季から町田で指揮を執る黒田剛監督(53歳)。昨季15位だったチームをどうやって変えたのか?
「数字だけを見れば、順調といえるかもしれません。我々は7試合を1タームと考え、勝ち点15を取ることを目標にしてきました。ちょうど第4ターム28試合を終えて60まできました。ただ、最終的には勝ち点を90に乗せるのが目標。そこを見据えるとシビアな問題も見えてきます。27節の千葉戦では3失点で敗れ、最近は失点の増加が気になります。累積警告や体調不良者、ケガ人も出ています。もちろん冷静に考えれば、優勝ライン、2位以内の自動昇格ラインはもう少し下がると思うんですけどね」
「昨季の50失点すべてをチェックした」
青森山田時代は、インターハイ、高円宮U-18プレミアリーグ、高校選手権とすべてのタイトルを狙い、緊張感のある負けられない戦いを続けてきた。そんな黒田監督だけに、J2という42試合のリーグ戦においても1つの失点、1つの敗戦へのこだわりが強い。
「許していい失点なんて1つもないですし、もちろん負けていい試合もないですから。選手にはいつも、“悲劇感”を持ち続けろ、と言っています。私自身、毎試合負けたことを想像しながら、そうならないための準備を徹底しています。根っからの負けず嫌いで、(負ければ終わりの)高校年代のチームを長く率いてきたこともあり、1つの負けや引き分けに対しても能天気ではいられない性分なんですよ」
町田は昨季42試合で50失点(得点は51)を喫しているが、黒田監督は就任前にそのすべての失点を映像で確認したという。なかには「高校生でもあり得ないような無駄な失点も少なくなかった」。しかし、キャンプから守備コンセプトや原理原則を徹底的に落とし込んだことで、プレシーズンではJ1勢とのテストマッチに6戦全勝(非公開も含む)。J2でも開幕から7戦負けなし(6勝1分け)、その間の失点はわずか1とスタートダッシュに成功した。
『プロだし、言われなくても分かっている』
「守備は原理原則をきっちりさせることで、ある程度は防げるものです」
難しいのはそうしたコンセプトの徹底を継続することだ。2月~11月という長いシーズンを戦うなかでは緩みが出てくることも否めない。町田は32試合で26失点とリーグ2位の数字を残しているが、黒田監督はここへ来て「(守備は)悪い習慣が出てきている」と眉をひそめる。