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球児の“丸刈り集団”を見た外国人「日本のヤクザでは…」同じ髪型=チームがまとまる“幻想”は消えるか? 「丸刈り訴訟」から慶応の優勝まで 

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岡野誠

岡野誠Makoto Okano

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posted2023/08/29 11:03

球児の“丸刈り集団”を見た外国人「日本のヤクザでは…」同じ髪型=チームがまとまる“幻想”は消えるか? 「丸刈り訴訟」から慶応の優勝まで<Number Web> photograph by Getty Images

慶応が覆した“常識”とは何だったのか。高校野球界でいわれてきた“高校生らしさ”のナゾを考察する(写真はイメージ)

〈この夏も、おおかたのチームがスポーツ刈り程度の髪の長さで、晴れ舞台を踏んだ。(中略)ごく普通の高校生と変わらぬオシャレなヘアスタイルのところもある〉(95年9月8日号/週刊ベースボール増刊)

 サッカーという他競技からの外圧もあり、甲子園球児の髪は伸びていった。98年の実態調査で『丸刈り義務付け』は31%になった。平成初期に丸刈りは急速に減少したのである。

 ここで1つの疑問が浮かぶ。30年ほど前に髪型の自由化が起こっていたのに、なぜ現在も丸刈りの球児が多く、今年の慶応が話題になったのか。

なぜ坊主が勢力を保ったのか

 5年に1度行われる実態調査の推移を見てみよう。『丸刈り』は2003年に46.4%と再び上昇し、08年には69%に達した。理由の1つとして、高校生の坊主に対する意識の変化が挙げられる。

 98年7月から反町隆史主演の学園ドラマ『GTO』が放送され、生徒役の池内博之は坊主頭で人気を得た。当時10代や20代に多大な影響を与えていたダウンタウンの松本人志も坊主にした。02年には映画『凶器の桜』で窪塚洋介が頭を丸めている。

 この流れは芸能界に留まらなかった。サッカー界の貴公子であるベッカムやイルハン、日本でも天才と呼ばれた小野伸二などが丸刈りになり、野球界でも甲子園スターである清原和博や中田翔などが坊主になっていた。

 著名人の影響で、丸刈りのイメージが変わった。かつては修行僧のような印象が先行していたが、おしゃれ坊主という言葉も生まれた。実態調査の「丸刈り」比率は13年79.4%、18年76.8%と大半を占めた。

 しかし、この急激な増加の原因をタレントやスポーツ選手の坊主頭だけに求めていいのか。実は、2000年代以降も昭和の空気は続いていたのだ。

残った「坊主は連帯感を高める」論

〈今大会は44校が丸刈り派。ほとんどが精神論からで、甲子園出場が決まった直後、頭を丸めた丸亀(香川)は「みんなの気持ちが一つになる」〉〈那覇(沖縄)も「精神力を高め、勝つチームを」と言う〉(2000年8月8日/読売新聞夕刊・大阪版)

〈ある監督(36)はいう。「確かに坊主頭や細かい規則が本当に必要かはわからない。でも連帯感を高める役割は果たす」〉(2003年7月9日/朝日新聞)

〈主将(3年)は「坊主頭にすることで野球に集中でき、チームとしてまとまる」と感じている。敗戦の後に気合を入れ直そうと、全員で示し合わせてさらにそり上げることもある〉(2012年7月3日/朝日新聞)

 “昭和の高校野球の常識”である「みんな同じ髪型にして意思統一を図る」という考え方は21世紀になっても主流だった。

【次ページ】 坊主よりも「同調圧力」に忌避?

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