「その点、私がソフトバンクにいたときの監督だった工藤（公康）さんは、すべてのデータを頭に入れていて驚きましたよ。彼の家にいったのですが、テレビが6台くらいあって、全部の試合を見られるようにしてあったんですよ。びっくりしましたよ。こんなんやっとんかって。だから、工藤さんが監督時代のソフトバンクは強かった」

2015年から7年間ソフトバンクを率いた工藤公康。リーグ優勝3回連覇、5度の日本一に導いている　©︎Naoya Sanuki

　両国のメンバーの特徴を把握する金氏の話は尽きることがなかった。最後に選手たちの指導経験をもとに感じた「日韓野球の違い」を教えてくれた。

「今の日本は組織としての力が弱い」

「韓国は五輪などの国際大会では、国を背負うという部分の気持ちが強いので、組織力はある。短期間で全体に意思を統一させることができるのでそこは強みです。日本の野球はどの選手も“野球に対しての頭”が優れている分、みんなが“自分”を前に出しますね。自己主張をする選手が多いので、そうした部分においては日本と韓国では野球に対する求め方や姿勢がかなり違っています。

　昔と今の野球は本当に違いがある思う。昔の選手は悪い部分を徹底して直して、自分のものにしてきた。でも今の日本の選手たちは悪い部分があっても、疲れていますと言って、練習をおろそかにしてしまうところがややある。私からすれば、今の日本は組織としての力が弱いなと感じることはありますよ。韓国の野球は『これが悪い』と指摘されたら、修正されるまで徹底的にやる。日本と韓国の良し悪しは別にして、それが現在の韓国の選手や指導者はできる部分があると感じます。

ロッテコーチ時代（2006年）©︎KYODO

　韓国のイ・ガンチョル監督はベスト4を目標に掲げていますが、とにかく優勝狙わないといけない。韓国の野球人気をさらに盛り返すためにも、なんとしてでもWBCではどの試合でも勝ってもらわんといけない。それは日本にも言えることでしょう。日韓戦はいい試合になってほしいですよ」

　金氏の発言は少し辛辣に聞こえるかもしれないが、言葉の端々に日本と韓国への“野球愛”を感じるものだった。3月10日の日韓戦、そして両国のWBCでの躍動がさらに待ち遠しくなってきた。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。