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侍ジャパンPRESSBACK NUMBER
「今の日本は組織力が弱いと感じる」ソフトバンク元参謀役の80歳が語る韓国野球の違いとは? WBC日韓戦で警戒すべき選手も明かす
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byJIJI PRESS
posted2023/02/27 17:01
2018年からソフトバンクのアドバイザーを務めた金星根氏(写真は2020年2月)
「(ジョンフは)バッティングのうまさに加えて走れることもあって、攻撃陣の中心となるでしょう。彼が塁に出る回数をどれだけ増やせるかが日本攻略のカギになります。ヤンはリードがかなりいい。ただ1つ怖いのは、韓国投手陣のコントロール。ここぞというときに乱れることがある。彼がうまくピッチャーを牽引してほしい」
実力で見れば「日本が上」と語る金氏だが、ただ「一発勝負のWBCでは何が起こるかわからない」と続ける。
「打撃と守備は正確性、投手には制球力が必要。そういう意味でいえば、試合になれば韓国がミスをするのか、日本の選手がミスをするのかによって、勝敗は分かれます」
攻守の要であるヤンがチームを牽引し、打線のキーマンであるイ・ジョンフが突破口を探りながら日本の隙をつく。そんな攻略の展望を明かしてくれた。
また、80歳の重鎮は「余談として聞いてほしい」とこんな話もしてくれた。
「私が日本の野球に携わっている限り、“問題点”いうのはほぼ見当たりません。ただ、あえて1つ言うならば、指導者たちがそこまでデータを深く把握してない傾向があること。データ作りの専門家はいても、結局は自分で調べたわけでないのですぐ忘れているんです。そういうのが日本の野球の弱点でもあるかなと」
「なぜあの時、小久保さんは……」
金氏が指摘するのは2015年の「世界野球WBSCプレミア12」の準決勝での日韓戦。日本が8回まで3-0でリードしながらも、土壇場の9回に韓国に4点を奪われて逆転負けを喫した試合だ。
「当時、日本代表で小久保(裕紀)さんが監督をやっていたときに最後9回で韓国に負けたでしょ。大谷(翔平)が7回まで無失点で抑えて、2番手は則本(昂大)がマウンドに上がって8回も抑えた。でも9回表で韓国打線に初球を狙われて、連続で打たれよったんです。そのあとの対処を小久保監督はできていなかった。ある日、小久保監督に『あの状況で何を考えていたのか』と聞いたんです。打たれたのは初球だったので、『どう狙われたのか分からなかったのか。8回まで抑えたから則本で行こうという気持ちがあったんだろうと。でも8回でも韓国打者のいい当たりは、球が正面をついていた』と伝えました。聞くとピッチングコーチはいたというのですが、少し遠慮もあったのかもしれません。小久保監督に『自分でデータを把握したりしなかったのか』とも聞いたんですが……そういうことですよね。戦況を見てどう采配するかは、監督の力量によるところも大きいと思います」
金氏は当時の小久保監督にとっても初の監督業で難しさがあったはずと「一発勝負の怖さ」を実感した試合だったと振り返っている。
さらに采配の妙はソフトバンク時代にも痛感している。