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福永祐一はなぜ騎手人生の晩年に全盛期を迎えたのか?「キングヘイローにようやく恩返しが…」異例のキャリアを歩んだ46歳と名馬たちの絆
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/02/25 11:03
2023年2月19日、東京競馬場で行われた福永祐一の国内ラスト騎乗後のセレモニー。引退を惜しむファンの声援に瞳を潤ませる場面もあった
翌21年、圧倒的1番人気に支持された大阪杯では牝馬レイパパレに4馬身3/4も離された3着となり、天皇賞・秋では3歳馬エフフォーリアの2着に敗れた。
ラストランで男泣き「本当に立派な走りを…」
ラストランは、コントレイル自身をはじめ4頭のダービー馬を含むGI馬が9頭という豪華メンバーになったジャパンカップ。道中は7、8番手で折り合い、直線で力強く伸び、2着を2馬身突き放して優勝。ラストランを圧巻の勝利で締めくくった。
福永は男泣きした。
「今日で終わりだと思うと、いろいろ込み上げてくるものがありますけども、本当に立派な走りをしてくれました。感動しました」
三冠馬の名誉を守りたいという気持ちが強かったがゆえの涙だろう。
2019年9月の新馬戦から2年強、2戦目以外はすべて騎乗してきた。
「夢のような時間でした。今までのジョッキー人生のすべてを注いで、それに応えてくれた。素晴らしい馬にめぐり合えたことに感謝しかありません。この馬が本当にすごい馬だということは、これから種牡馬になって証明されると思います。また競馬の歴史をつくり出す子供を出してくれると思います」
時間は前後するが、この年のダービーも、シャフリヤールに乗った福永が制していた。初勝利を挙げるまであれだけ時間がかかったのに、一度勝ってしまうと、4年間のうちに3勝もしてしまったのだ。「ダービーには勝ち方がある」というのは武の言葉だが、福永もダービーの勝ち方を自分の物にしたのだろう。
「キングヘイローにようやく恩返しができた」
この年、彼はもうひとつ、キャリア全体において大きな意味のある勝利を挙げている。
3歳馬ピクシーナイトでスプリンターズステークスを勝ち、同馬にGIタイトルをプレゼントしたのである。
「前々から、この馬は凄い馬になると公言していたのですが、想像を超える馬になる可能性が出てきました。この先、短距離界を引っ張っていく存在になる馬です」