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「ああ、コントレイルにお辞儀を…」福永祐一は、カメラの前で“2度泣いた”…感動の名シーンを激写したカメラマンが「忘れられない一枚」
posted2023/03/04 11:00
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Keiji Ishikawa
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「思い返すと、すごい歓声でしたね」
文藝春秋写真部のカメラマンとして、30年以上にわたり雑誌『Sports Graphic Number』で競馬写真を撮ってきた石川啓次は、2018年日本ダービーのゴールをそう振り返った。
東京競馬場に詰めかけた12万人を超える大観衆の視線の先には、19回目の挑戦で遂にダービーを獲った福永祐一とワグネリアンの姿があった。先頭で粘るエポカドーロを最後でかわし、突き抜けたワグネリアンの背中で、福永は会心の表情を浮かべていた。
撮影を担当した石川は、ゴール直後の福永の様子を捉えている。
「この日は馬場の内ラチの撮影台から、ゴールの瞬間を狙っていました。被写体との距離は約20m。肉眼では細部が見えにくい距離ですが、レンズを通して、福永騎手の表情がよく見えた。この写真はゴール直後の瞬間で、福永さんがうしろの他馬を見て確認する様子がわかりますね。晴れの舞台で撮影の失敗は許されないので、ラスト200mを切ったあたりからカメラを構え、ワグネリアンと福永さんに狙いを定めていました」
12万人超の大観衆の前で見せた“男泣き”
ゴールから数分後、ゆっくりと時間をかけて正面スタンド側に戻ってくる福永の姿に、石川は普段と違うものを感じたという。
「レンズ越しに見ていると、長い間顔を伏せているのがよくわかりました。福永さんには珍しく、涙を流しているんだな、と。ダービーだけ勝つことができていませんでしたから、それだけ大きなことだったのだと思いました。ウイニングランをしながら、徐々に感情が込み上げてきたのかもしれませんね」
そしてファンの前に戻ってきた福永とワグネリアン。石川の撮影した一枚は、ワグネリアンの背中で号泣する福永と、祝福するファンたちの姿を同時に捉えている。
普段のレース撮影ではファンの手前側、外ラチ沿いでカメラを構えることの多い石川が、この日内ラチでの撮影に挑んだのには、理由があった。
「この日はお客さんも相当入っていて、内ラチからだと、観客席と人馬を同時に撮ることができると思ったんです。お客さんも含めた全体の雰囲気を撮るために、あえて寄らずに“引きの構図”を生かしました」