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福永祐一はなぜ騎手人生の晩年に全盛期を迎えたのか?「キングヘイローにようやく恩返しが…」異例のキャリアを歩んだ46歳と名馬たちの絆 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2023/02/25 11:03

福永祐一はなぜ騎手人生の晩年に全盛期を迎えたのか?「キングヘイローにようやく恩返しが…」異例のキャリアを歩んだ46歳と名馬たちの絆<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

2023年2月19日、東京競馬場で行われた福永祐一の国内ラスト騎乗後のセレモニー。引退を惜しむファンの声援に瞳を潤ませる場面もあった

工藤公康の金言「武豊にかわいがられているうちは…」

 30代の前半に、もうひとつ、転機となったことがあった。親しくしている元プロ野球選手・監督の工藤公康氏に「(武豊に)かわいがられているうちは超えられない」と言われたのだという。

 以来、武とは特にプライベートで距離を置くようになり、やがて勝ち鞍で武を上回るようになった。

 そのエピソードを知った筆者は、04年、川崎のジャイアンツ球場に通っていたときに見たシーンを思い出した。私は、巨人のクローザーを任されていた河原純一氏の密着取材をしていたのだが、室内練習場入口のミックスゾーンで、当時巨人に在籍していた工藤氏が、記者たちを相手に野球談議をしていたのだ。福永が検量室前でしていたのと同じように、特定の誰かに語りかけるのではなく、問わず語りのような感じだった。細かな技術論ではなく、チームを強くするには何が必要か、今ほど練習熱心ではなかったホークスにいたときどのように周りの意識を変えたか――といった話をじっくりしていた。

 工藤氏も福永も、番記者を教育しようとか、自分の考え方を理解させようとかいった意図はなく、ただ自分たちが好きで関わっている競技について違う立場から話し合うことで、楽しみながら、業界全体を盛り上げていければいい、という感覚だったように思う。

 ともかく、交流のある2人が、それぞれ同じようなことをしていたのが、面白い。

 工藤氏はソフトバンクホークスの監督としてチームを5度日本一に導いた。福永も調教師としてビッグレースをいくつも勝ち、何度もリーディングを獲る名将となるか、楽しみだ。

19回目の挑戦でついにダービー制覇

 福永は、2013年には131勝を挙げ、2度目のリーディングを獲得。しかし、エピファネイアで臨んだダービーでは、武のキズナにゴール前でかわされて2着に惜敗した。同年夏には元フジテレビアナウンサーの翠夫人と結婚。翌14年にはジャスタウェイでドバイデューティーフリーを圧勝。同馬は日本馬として初めてロンジンワールドベストレースホースランキングで世界一になった。17年にはJRA通算2000勝を、武に次ぐ史上2番目の速さで達成した。

 そして2018年5月27日、ワグネリアンに騎乗して日本ダービーを優勝。父と同期の柴田政人氏に並ぶ、初勝利までの最多騎乗記録となる、19回目でのダービー制覇であった。

【次ページ】 無敗の三冠馬・コントレイルとの出会い

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