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巨人戦解説「40万円」を捨てて…エモやんが出馬を決めた“アントニオ猪木の言葉”、選挙期間中に“まさかの電話”「もしもし、長嶋です〜」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byShiro Miyake
posted2023/01/17 11:00
田中角栄、アントニオ猪木、長嶋茂雄……江本孟紀75歳の人生を振り返る時、昭和を彩った大物の存在は欠かせない
「そこまで言ってもらうと、私も内心は卑しいから(笑)。周りも『散歩してもらえよ』と背中を押すし、『大変申し訳ないんですけど、何日の何時頃来られますか』と恐る恐る聞きました。長嶋さんが『七夕の夕方4時に通りかかるから声かけてください』と言うわけですよ。その情報を、ウチの運動員が共同通信や各スポーツ紙に流した。でも、本当に来るかどうかわからないじゃないですか。長嶋さんの忘れっぽいエピソードをたくさん聞いてるので(笑)」
当日、事務所前の道路に大勢の報道陣が集まり、江本は猪木とともに長嶋の到着を待った。
「心配で仕方なかったんですけど、白のセンチュリーできてね。ひとつ手前の信号でバーッと降りて、夏なのにビシッと背広着て、散歩に来られましたよ。一直線に事務所まで歩いてくるところを、報道陣がパシパシ撮る。それでも、長嶋さんは眼中にないわけですよ。“散歩中”ですから」
江本が「お疲れ様です」と声を掛けると、長嶋は「あ、ここなの?」と事務所に立ち寄った。
「次の日のスポーツ紙にデカデカと載りました。当時、自民党本部には一般紙しかなかったけど、影響力の大きさを知ってスポーツ紙も置くようになったと聞きました。長嶋さんが歴史を変えましたね」
なぜ長嶋茂雄が支援したのか?
評論家としての交流は多少あったが、現役時代のチームメイトでもなければ、監督時代の教え子でもない。どうして、長嶋は江本の元を訪れたのだろうか。
「野村(克也)さんが監督になってから、一茂がヤクルトで全然使われなくて苦しい思いをしていた。僕は子供の時から長嶋ファンだから、息子が干されてる状況を我慢できず、一茂を呼んで気晴らしの食事会を開いたんですよ。それを息子が親父に伝えたようで、いつか江本に何か返さないといけないと思ったみたいです。長嶋さんは本当に人情のある人ですよ」
選挙戦終盤、今度はプロ野球の現役スターから「応援に行きたい」と電話があった。実現すれば大問題に発展しそうな事態は、どんな結末を迎えたのか――。〈つづく〉
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