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巨人戦解説「40万円」を捨てて…エモやんが出馬を決めた“アントニオ猪木の言葉”、選挙期間中に“まさかの電話”「もしもし、長嶋です〜」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byShiro Miyake
posted2023/01/17 11:00
田中角栄、アントニオ猪木、長嶋茂雄……江本孟紀75歳の人生を振り返る時、昭和を彩った大物の存在は欠かせない
6月29日、江本はカンボジアから帰国した猪木とともに会見に臨み、「満員の甲子園よりも緊張感がある」と話した。
「もともと、政治に関心はあったんですよ。新潟の公民館で田中角栄さんの応援演説をしたこともありました。竹下(登)さんが創政会を作って、田中派が分裂状態になった翌年の衆院選前でしたね。元警視総監で田中シンパの秦野章さんに相談された知人が『江本を応援に呼んだらどうか』と提案したみたいで。ちょうど、大阪のテレビ番組で作家の野坂昭如さんと会ったので、どうすべきか聞いたら『おまえな、あんなとこ行ったらな、年寄りは黒いヤツばっかりだよ。行ってみろよ』って言われてね」
3年前の1983年の衆議院議員選挙で、野坂は角栄のお膝元である新潟3区から出馬し、落選の憂き目に遭っていた。
「公民館に行ったら、玄関に(娘の田中)真紀子さんがいてね。選挙区に自民党の人間を寄せ付けないようにしていた。挨拶に来る議員を追っ払ってましたよ。後藤田(正晴)さんとか重鎮は中に入れてましたけどね。ピリピリした空気だったけど、まあ自分には責任ないやと思って。会場に出て行ったら、大拍手でしたよ。野坂昭如の話と全然違うなって(笑)。角栄さんのポスターを見て『じいちゃん、ばあちゃん、ごめんなさい。俺は会ったことない』と言ったら、結構ウケてましたね」
巨人戦の解説が「40万円」の時代
頭の回転が早く、しゃべりが立つ上に度胸もある。政治家の資質を兼ね備えている江本には、猪木以前にも立候補の誘いが何度もあったのではないか。
「いや、なかったですよ。子供の頃から政治は嫌いじゃなかったけど、政治家になりたいわけではなかった。ただね、当時のスポーツって『好きな人が好きなことをしているだけ』と思われていて、現実には問題が山積みだった。グラウンドが足りないとか、オリンピックでメダル取っても大して報奨金がないとか、スポーツ振興が全く整っていなかった。自分が議員になったら、これをすべきだなと思いましたね」
国会議員は儲かる――。世間にはそう思われている節がある。しかし、江本のような長者番付に掲載される著名人にとって、出馬は収入の激減を意味する。