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巨人戦解説「40万円」を捨てて…エモやんが出馬を決めた“アントニオ猪木の言葉”、選挙期間中に“まさかの電話”「もしもし、長嶋です〜」
posted2023/01/17 11:00
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph by
Shiro Miyake
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「猪木さんは『うん』と言わざるを得ないパワーや心意気を持っている人なんですよ」
日本のプロレス界を牽引し続けたアントニオ猪木は1989年、『国会に卍固め』『消費税に延髄斬り』を掲げ、スポーツ平和党を立ち上げて参議院議員選挙に出馬。比例区の当選50枠のうち48番目で滑り込み、初のプロレスラー議員となった。3年後の6月9日、参院選を直前に控えた猪木は党勢拡大のため、江本に出馬を打診した。
「最初、共通の知人を含め3人で会いました。他にも元スポーツ選手に声を掛けていたようですけど、誰も決まらなくて、最後の最後に私のところに来たみたいでしたね。比例代表の名簿1位に載せると言われたけど、即答は避けました」
出馬を決めた“猪木の一言”
6月19日に出馬の噂が流れ、21日には阪神対巨人戦(甲子園球場)の試合前に巨人の藤田元司監督に「参院選に出るってホントなの?」と聞かれた。翌22日、江本は記者会見を開いて「80%は前向きに検討している」と話した。スポーツ紙は〈スポーツ平和党から参院選に出馬を表明〉など決定事項のように報じたが、断定表現を避けた一般紙もあった。事実、江本の気持ちは揺れていた。
「猪木さんの顔を立てないといけないから話を聞くんですけど、毎回のらりくらり引き延ばしていました。断ったこともあったけど、まだ誘ってくる。公示が迫ってきたから、ここを凌いだら出馬しなくていいなと思って、最後にもう一度会ったんです。『ちょっと考えさせてください』と優柔不断に答えたら、『江本君。スポーツマンがね、ダラダラ長いこと考えていい答えが出るのか』と毅然と諭されたんですよ。その言葉を聞いて、『出ますよ』ってつい言っちゃったの」