柔らかいのに強い珍しいタイプ。140キロの力感で、余裕の150キロ台。しかも、その「質」がいい。

　昨年まではあちこちに痛みを抱えて、恐るおそるの投球だったそうだが、あるスカウトの方は、とんでもない！と、こんな逸話を披露した。

「一昨年だったかなぁ……青学のグラウンドのブルペンで、エースの森（圭名、現・三菱重工East）が150キロ近いボール投げてる横で、もっといいボールを投げてるのがいて。それが1年の時の常広ですよ。来年ですか？　1位も1位、スーパー1位ですよ！」

「“東北”を征服できるピッチャーです」

■大学生編【2】後藤凌寿投手（東北福祉大・3年）

　大分県下有数の進学校でもある「大分舞鶴高」から青山学院大に進んだ常広投手も、高校時代は全く無名の存在だったが、四日市商高（三重）から東北福祉大に進学した【2】後藤凌寿投手（東北福祉大・3年・183cm78kg・右投右打）のほうは、半分「遊撃手」だったから、投手としての存在感すら曖昧としたものだったようだ。

　それでも、東北福祉大指導陣は、

「来年は彼です。仙台リーグだけじゃない……“東北”を征服できるのが、コイツです」

　格別の力こぶが入る。

　本気で「投」と向き合ったのは、東北福祉大に進んでからだと聞いた。それでも、全国から逸材集うこのチームで、3年の秋には主戦の一角として「全国」を目指す大一番に先発するほどなのだから、間違いなく抜けた素質の持ち主なのだ。

「広島・栗林良吏投手がそうだった」

　ちょっと小さめのテークバックは、彼が高校でショートも守っていた頃の名残りなのか。一度、右ヒザの近くにスッと右手を下ろして、そこから体の右脇腹に沿って持ち上げて、トップの位置を定める。打者から上手にボールを隠している。

　左半身を打者に向けたまま踏み込んでくるから、腕を振り下ろすまで、ほとんどボールが見えないはずで、それが打者の「体感スピード」を10キロ近くも上げているのではないか。スピードガンなら140キロ前半だろうが、打者の振り遅れ方がハンパじゃない。

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