「白石、気をつけろよ！」

　さすがに落ち込んでいた白石に、先輩の誰かが声をかけたのだろう。そこでメンバーから笑い声が起きる。

　失敗してしまった仲間には、慰めの言葉ではなく、ツッコミを。これが青山学院「作法」である。このホームの情景は、東京・町田にある寮で構築された人間関係の一部であろう。彼らはこう言い合える関係をひとつ屋根の下で築いてきたのだ。

　この集団は、敗戦をポジティブにとらえ、そこからの「レジリエンス」、起き上がる力を持っている。先輩たちも、そうしてきた。

　原監督は学生たちのざわめきから少し距離を置いて、考え事をしているようだ。

　箱根駅伝が57日後に迫った夕刻の出来事。

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