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青学大・原監督が明かす“2分19秒の誤算”「今日は勝てると思えなかったね」箱根駅伝まで2カ月…青学大は“ノーミス”駒大に勝てるのか?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2022/11/09 11:02
11月6日の全日本大学駅伝。3位でゴールする青学大8区の宮坂大器(4年)、1秒後に4位順大が迫っていた
2区と8区以外の6区間では3勝3敗、タイムでは駒澤が8秒差で優っているが、五分の戦いを見せたのである。
そこに手ごたえは感じつつも、勝てる予感が持てなかったのは、駒澤がノーミスでタスキをつないだからであり、原監督としてはそこに「衝撃」を感じたのではないか。
どこか冷めたような…こんな原監督は初めてだ
駅でたまたま会う前、レースを終えたあと、混乱を極めたミックスゾーンで、原監督は開口一番こう話していた。
「箱根、出雲、そして今回の全日本といずれも大会新記録が出たわけです。練習メソッド、駅伝に向けての姿勢において、昭和は終焉したなと実感しました。各大学が新しいメソッドで駅伝に挑み、令和の新駅伝時代に突入したと思いますね」
そのときから悔しさは微塵も見せず、清々しいほどの表情を浮かべていた。まさに「敗軍の将」といった風格さえあった。
ただし、悔しさではなく、敗戦を粛々と受け入れた態度の裏には、「青山学院も、このままでは勝てない」という警報が監督の心のなかで響いていたと見ることもできる。駒澤がミスを犯す可能性は極めて低いことが、出雲と全日本で証明された。田澤廉というエースの存在が、チームを変えているのが分かる。
青山学院にとっては、箱根駅伝ではこれまで以上に策を、知恵を絞らなければ勝機は訪れない。
特急電車を待ちながら、監督は話す。
「箱根駅伝は勝負できます。勝てるチャンスは十分にありますよ。今回、見えない駒澤を追いながら、3区以降もタイムとしては十分に勝負できた。5区の山上り、6区の山下りはウチにとって強みになるはずです。そうなると、残り2枠。ここからのレギュラー争いは激しいよ。私としては、部内の争いに勝って力を使い果たした選手ではなく、余力のある選手を見極めることが仕事になるでしょう」
どこか客観視しているような、冷めたような。こんな原監督を見たのは初めてだ。この敗戦は、将来の青山学院にとって大きな意味を持つかもしれない。
「気をつけろよ!」青山学院“作法”を見た
名古屋行きの特急を待つ間、回送列車がホームに入ってくる。そのとき、誰かが言った。