猛牛のささやきBACK NUMBER
「あの場面、結構テンパってました」オリックス宇田川優希“日本シリーズ2者連続三振”の舞台裏…若月、宗に感謝する理由とは?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNanae Suzuki
posted2022/11/07 11:03
日本シリーズ第4戦で杉本、山崎とお立ち台に上がった宇田川(中央)。夏に支配下登録を勝ち取ると、強力リリーフ陣の一員として日本一に貢献した
日本一決定後の記者会見で、この日本シリーズの分水嶺となったのは? と聞かれた中嶋監督はこう答えた。
「2戦目、(9回裏に)同点ホームランはありましたけど、そのあと阿部(翔太)が抑え切って、そのまま中継ぎ陣が引き分けで終わってくれたのは非常に大きかった。あの時に、まだいける、この試合はなかったことにできるという、そういう開き直りから始まり、4戦目の、強いて名前を挙げるなら宇田川ですかね。あの時から、このピッチャー陣だったらいけるというふうに思いました」
第5戦で、中嶋監督はその宇田川と、山崎颯をベンチから外した。選手のコンディションを最優先する、普段通りの中嶋采配。その翌日は移動日だったため、2人は2日間の休養を挟んで第6戦に臨むことができた。
「(第4戦は)厳しい場面での登板で、2イニング連続でピンチだったので、出力も使って、体力的にもちょっと疲れていましたし、何よりメンタル面が結構疲れていた。そこでリフレッシュすることができたので、また頑張ろうという気持ちになれました」と宇田川。
第6戦は1イニング、第7戦は2イニングを無失点に抑えた。村上との3度目の対戦では初めて三振を奪った。このシリーズを通して4試合に登板し、被安打2、10奪三振、無失点。
育成から這い上がった23歳は、指揮官の采配や周囲のサポートを支えに、窮地を乗り越えるたびにそれを自信にして、開花した。1年前にはテレビ越しに見て、「すごく遠い」と感じていた日本シリーズの舞台で、今年はMVP級の活躍。オリックスの投手力の象徴として、強烈なインパクトを残した。
すぐに秋季キャンプへ「来年は開幕一軍を」
11月3日には御堂筋で優勝パレードが行われた。オープンバスに乗った宇田川の眼前に広がっていたのは見たことのない光景。イルミネーションが輝く御堂筋の沿道に約30万人が集まり、祝福してくれた。
この1年でこれほど人生が変わった選手はいるだろうか。だが、日本一を決めた直後も、宇田川はしっかりと地に足をつけて来年を見据えていた。
「来年は開幕一軍を目指して、このオフシーズン頑張ろうと思っています。今年は勢いで行った部分もありますけど、シーズン前半からずっといたら難しい部分もたくさん出てくると思う。体力面が一番の課題になると思うので、このオフは体作りをしっかりやりたいと思っています」
パレードを終えると、華やかに装飾されたバスを降り、その足ですぐ秋季キャンプ行きのバスに乗り換えて、高知へと出発した。
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