野球クロスロードBACK NUMBER
大阪桐蔭・最強世代は「全員苦しんでいる」…キャプテン中川卓也が語る、“高校と大学の野球”は何が違った?「自分の過信に気づきました」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2022/10/18 11:01
あの大阪桐蔭「最強世代」のキャプテン・中川卓也。早稲田大4年の今、インタビューを実施した
「大阪桐蔭の中川」がつきまとった日々
大学野球最高峰のレベルは想像以上だった。
1年春のリーグ戦から主にスタメンとして全13試合に出場したが、打率は1割2分8厘。秋、そして翌春のリーグ戦でも主力として名を連ねたが、2割台と低空飛行が続いた。1年生から意識してきたという、バットを振り切る姿勢を見せようとするも、なかなかパフォーマンスで体現できなかった。
「『この苦しさが、いつか実を結ぶ』と思ってやってはいるんですけど、なかなか結果が出ず、苦しい……。そういう感じでした」
アマチュア球界で、「中川卓也」というブランドは絶大だ。
春夏連覇の大阪桐蔭を牽引した絶対キャプテンは、根尾、藤原と並ぶチームの象徴でもあった。高校時代のイメージがあまりにも強すぎるため、大学生となってからも「大阪桐蔭の中川」の幻影を追われる。
「高校は過去のことなんで。今は早稲田の中川として頑張ってるんで」
取材などでそう訴えても、大阪桐蔭という冠を取り除いてもらえない。そんななか、「早稲田の中川」として独り立ちできたとすれば、おそらく大学3年の昨年だろう。
秋のリーグ戦。中川は12安打、打率3割3分3厘と自己最多の成績を挙げ、初めてベストナイン(サード)に選ばれた。それまで課題だったとされるインコースを克服できたことが大きかった。
そして中川は、「早稲田の象徴」となった。
自ら小宮山悟監督に志願してキャプテンとなったのは、小学校から高校にかけてチームをまとめ上げた成功体験があったからである。
「最終的には『いいチームを作れる』って自信もあったし、経験からも自分のやり方は正しいとも思っていたんですけど……。それが間違いだったって気づくわけです」