これは将来的なJリーグ入会に不可欠な“仮免許”のようなもので、運営法人の組織やスタジアム要件を揃え、商標の取得なども済ませた上で、電話帳よりも分厚い書類を提出してようやく認められる。JFLに上がってからでも間に合うものだが、高原は「経営者の都合でJに上がれないことは避けたい」と先回りして準備を進めた。そうしたクラブの枠組みの強化も順調だ。

　オーナーであり、現場の責任者であり、試合のない時には全国にスカウトにも出かける。最初に選手兼監督兼代表と書いたが、こなしている役割はとてもそれだけでは収まりそうにない。さらにコーヒーに関する業務まで加わる。

「まあ忙しいですけど、それぞれに力になってくれる方もいるんでね。あとはもうコミュニケーションです。コミュニケーションを取って状況を常に把握しておいて、何かあったときにどうすべきかアンテナを張っておく。この仕事を始めてから思いました。コミュニケーション大事だなって」

©Nanae Suzuki

　最後の言葉に高原自身が思わず笑ってしまったのは、以前の自分だったら絶対言わないであろうセリフだったからかもしれない。

　一人の気安さは失ったものの、人と関わりながら続くチャレンジ。沖縄にいたのはクラブとコーヒー豆だけを育てている人ではなかった。43歳となってもなお、自らの可能性にも水を撒き続ける人だった。

＜コーヒー編から続く＞