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2週間出場ゼロ→山本由伸と最優秀バッテリー賞「大逆転の1年」を過ごしたオリックス若月健矢が語る“寅威さん”へのライバル心
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNanae Suzuki
posted2022/03/01 11:00
山本由伸や山崎颯一郎(左)らとのバッテリーでリーグ優勝に貢献した若月健矢捕手。出番がない時期を乗り越えて掴んだ自信を新シーズンに生かす
若月は毎年オフに、前シーズンの全試合を見返すが、他の捕手がリードした試合も含めて昨年を振り返り、こう感じたという。
「だいたいピッチャーって、ストレートと、勝負球になるような変化球が2つぐらいある。例えば山岡(泰輔)とかは3球種4球種と、軸になるボールが多くありますけど。その中で寅威さんは、優先順位的には高くないボールを使うのがすごくうまいなと感じました。だから左ピッチャーをリードするのがあれだけ上手なのかなと。僕はどちらかというと勝負球とまっすぐに偏ってしまうところがあると反省しました」
若月にとって伏見はどんな存在か。そう聞くと、「『情熱大陸』みたいな質問ですね」と苦笑しながら、こう答えた。
「バッティングもよくて、リーダーシップもとれる本当にいいキャッチャーだと思いますから、見習うところがいっぱいあります。もちろん寅威さんはライバルです」
「負けていないと思うところもある?」と聞くと、「負けてないとこもあると思います。そこは言わないですけどね」とかわした。
今年はドラフト3位で國學院大の福永奨が入団。キャンプ終盤の怪我で今は離脱しているが、正捕手争いは今年も激しさを増しそうだ。キャンプ中、若月はこう語っていた。
「今年もまたゼロからのスタートになる。去年、由伸と最優秀バッテリーを取ったからといって、今年も当たり前に組ませてもらえるなんて思っていませんし、また一からアピールです。どんな球でも止められるように常に準備していますし、ブロッキング、スローイング、フィールディングは自信を持ってやってきているところですから、負けてられない。あとは、チームに貢献できるようなバッティングをどれだけしていけるか。頑張りたいと思います」
発する言葉は謙虚だが、どことなく自信を感じさせる。2週間出場ゼロ、からの、優勝と最優秀バッテリー賞受賞。大逆転の1年が若月にもたらした財産はとてつもなく大きい。