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「世界一の速さ」と「キンちゃんみたいな獣性」主将リーチ マイケルが明かす2023年ラグビーW杯で勝つための準備
posted2021/08/10 11:00
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
JRFU
「今、部屋はこうなってますよ」
そう言うと、リーチはタブレットのカメラを自分で回して見せてくれた。ビジネスホテルらしき部屋ではベッドが壁に立てかけられ、床が広がっている。
「ここで自重トレーニングしてます。ストレスは、特に感じません」
19年W杯以来の活動再開となったラグビー日本代表が戦った1年8カ月ぶりのテストマッチ・シリーズ。世界のドリームチーム、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズとアイルランドという強敵と戦い、帰国して2日。指定施設で隔離期間を過ごしていたリーチはオンラインでインタビューに応じてくれた。
冒頭、インタビュー時間を確認すると、リーチは「時間は大丈夫です。めちゃ暇ですから」と笑って、じっくりと話してくれた。
リーチが語る欧州遠征の収穫
今春の日本代表は5月26日、別府合宿で始動した。
トップリーグのプレーオフ決勝を戦ったパナソニックとサントリーの選手たちは1週間のオフが与えられ、4日遅れの30日に合流。そこから急ピッチで6月12日のサンウルブズとの強化試合に備え、16日に渡英。英国到着後はホテルとグラウンド以外の外出は厳禁というバブル生活を送りながら26日のライオンズ戦、そして7月3日のアイルランド戦に臨んだ。
長い空白を経ての活動再開ながら、準備期間は短く、強化試合も1試合しか組まれない強行日程だった。
「今回のツアーで良かったのは選手のマインドセットです。選手はみんな、ハードワークする覚悟と自分たちへの期待を持って集まってくれたし、練習に取り組む姿勢も、コーチングスタッフの事前の準備も素晴らしかった。ポイントは選手同士のコネクションをいかに早く強く作れるかだったけど、それも早くできた」
集まって最初のリーダーミーティングで確認したのは「日本が世界に勝つための武器はスピード」という認識だった。ラインアウトやスクラムをセットする速さ。ディフェンスラインを揃える速さ、一斉に押し上げる速さ。速く走り、速いパスを投げ……という実際のプレーだけでなくトランジション(切り替え)の速さ、判断の速さ、意思伝達の速さ。すべての分野で世界一の速さを追求しよう。
「特に今回感じたのは学習の速さです。コーチの提案を理解して、次の練習ですぐ実行できる。今回は複雑なサインが多かったけど、みんなすぐに理解した。19年のW杯から2年近く時間が空いて、新しいメンバーも入ったけど、あのときと同じくらい速かったと思う」
8カ月に及ぶ周到な準備で臨んだ19年W杯本番中に匹敵する状態に、わずか1カ月で到達していたというのだ。
では、リーチ自身のパフォーマンスは。