- #1
- #2
Number ExBACK NUMBER
「人に見せるものでは絶対ないので」WBC侍ジャパン前監督・栗山英樹が記していた“栗山メモ”公開秘話…世界一に導いた采配の本音「本当は見せたくないです」
posted2026/02/26 11:01
WBCで侍ジャパンを世界一に導いた栗山英樹監督。日々記していた「栗山メモ」には何が描かれていたのか
text by

金沢隆大Ryuta Kanazawa
photograph by
Tatsuo Harada
人に見せたことのないノート
清廉な白いカバーのA5サイズのノートが数冊、バッグから姿を現した。そして、無造作に机の上に置かれた。その持ち主が愛情を込めて表紙をぽんっと軽く叩いて言った。
「人に見せるものでは絶対にないので。人に見せたことはないので」
言葉を発したのは栗山英樹。第5回WBCで監督として日本代表を率いて世界一に導いた男だ。優勝を成し遂げたおよそ2か月後の5月26日、東京・渋谷区のNHK放送センターの一室でディレクターの三木、カメラマンの落合、そして記者の私の取材班が栗山と顔を合わせていた。栗山が取り出したノートの束は、私たち3人の視線をぎゅっとつかみ離さない。吸い寄せられるように見入っていたのには理由がある。私たちは大会前からこれまでずっとこの瞬間を待ちわびていたからだ。
ADVERTISEMENT
「栗山さんは何年も前から毎日、日記をつけているようだ」
「当然、WBCのメンバー選考とかいろんなことが書いてあるんでしょうね」
「少しでも見せてくれたら番組がかなり深い内容になりますね」
WBC前年の2022年12月末。移動中の車内でそんな会話をした。熱っぽく語る車内から見える景色は白かった。年の瀬の北海道の降りしきる雪を撮影機材を積んだ車が切り裂いていく。雪が降り積もる中、私たちは初めて北海道栗山町にある栗の樹ファームを訪れた。車から降りて玄関に向かうわずかな時間に、雪国を甘く見ていた私の靴の中に雪が入り込んだ。無事に取材が終わり、ログハウスの中で雑談をしている時だった。三木がそれとなく切り出した。
完全な拒絶
「栗山さんが書かれている『栗山ノート』はないんでしょうか?」
「全然大したことを書いてないし、見せられる文字でもないし」
実在することは認めたが、早く話題を変えたいようにも感じた。
「ですが、栗山さんがどんなことを考えて、どう戦おうとしているのかを伝えられたらと」
三木もやんわりと食らいつく。
「そうかもしれないけど、これは誰にも見せたことがないし見せるものでもない。墓場まで持って行くものだから」
口調は柔らかい。だが、完全な拒絶だった。

