「絶対に弱みを見せない」気持ちの強さ

「もちろん投手としての才能、技術、研究心、向上心。そういうダルビッシュの凄さというのはみんなが知っていると思います。でも私は本当のダルビッシュの凄さとは、彼の持つプロ根性だと思っているんです」

　監督時代の梨田はマウンドのダルビッシュに打球が直撃するのを何度も目撃した。しかし、そのときダルビッシュが痛がる素振りを見せたことは一度もなかったと言う。

「マウンドでは平気な顔をして投げ終えて、ベンチ裏で、痛がって大声を上げている姿を何度も見ました。でも、相手やお客さんが見ている前では絶対にそんな素振りは見せない。絶対に弱みを見せないという気持ちの強さを知っていたから、自分で投げると言ってきたら、必ずやってくれると確信していました。だからブルペンのピッチングなんて見る必要はなかったんです」

　本人から「いけそうだ」と聞いて、梨田はすぐに第2戦の先発を決めている。

「理由は2つです。1つは球場が広い札幌ドームの方が、東京ドームよりいいと思った。それと第2戦に投げさせないと、シリーズで2回使えないじゃないですか」

　4勝2敗と巨人が第6戦で制したシリーズ。だが、もし第7戦までもつれ込んでいれば、ダルビッシュが再び、札幌ドームのマウンドに上がることだけは決まっていた。