Sports Graphic Number SpecialBACK NUMBER
坂本勇人「“戦友”を酔わせた2000本」~高校時代の恩師が語る~
posted2020/11/21 07:00
坂本勇人は31歳の若さで大記録を達成した
text by

高川武将Takeyuki Takagawa
photograph by
KYODO
11月8日、2000本安打を達成する2時間ほど前のことだ。試合前のグラウンドに現れた坂本勇人は、応援にかけつけた青森・光星学院高(現八戸学院光星)時代の旧友とバックネット越しに談笑していた。
「けっつぁんは来てるの?」
坂本は聞いた。「けっつぁん」とは、高校の恩師である金澤成奉(現明秀日立監督)に、その顎の形から坂本たちが陰で付けた呼び名だ。旧友が指さす先のスタンドにいる恩師を見て、こくりと頭を下げる。
「けっつぁんに言うといてや。今日俺が打たれへんかったら、けっつぁん、だいぶ『下げチン』やぞって」
そう笑って言い放つと、ノックの輪の中に入って行った。記録達成のプレッシャーが本当にあったのか、疑いたくなる話だ。
「伝言」を聞いた金澤は苦笑交じりに言う。
「そんなこと言いやがってね。確かに、アイツと俺は相性が悪いから、打たれへんちゃうかなとも思いましたけど」
実際はまるで違った。初回の第1打席、泳ぎながらも巧みなバットコントロールで捉えた打球は左翼線に弾んだ。31歳10カ月という史上2番目の若さでの偉業を、恩師の前であっさりとやってのけたのだ。
「あのヤンチャ坊主が球界を代表する選手になって、2000本を打って祝福される。ここまで来れたのはなぜなのか、その瞬間を目の当たりにしたいと思ったんです」
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
NumberWeb有料会員になると続きをお読みいただけます。
残り: 2527文字
NumberWeb有料会員(月額330円[税込])は、この記事だけでなく
NumberWeb内のすべての有料記事をお読みいただけます。
